この記事をまとめると
■オフロードダンプトラック(重ダンプ)を生産している貴重なメーカーの1社がボルボだ
■ボルボは10年ぶりにフルモデルチェンジした新型モデル6種の発売を開始した
■閉鎖空間で運用されるダンプトラックは自動化技術の導入が進んでいる
ボルボの新型ダンプトラックがもつ悪路走破性のすごさ
一般ではほとんど目にすることがないオフロードダンプトラック(重ダンプ)。それもそのはず、大きさが2階~3階建てのビルほどもある車両だから、公道を走行することができないのだ。活躍しているのは、ダムの建設現場や大型造成地などといった閉鎖空間なので、公道を走る建設機械のように道路交通法の制限を受けない。では、どうやって保管場所から現場まで移動しているのかというと、分解をしてパーツごとに運んでいるのだそうだ。もっとも大きなダンプの荷台部分は切断するなどして小さくし、現場で溶接して組み立てることもあるのだという。
とにかく大きいというだけではなく、需要も限られた特殊な車両であるだけに、生産しているメーカーは限られている。その貴重な1社が、スウェーデンに拠点を置いている高級乗用車やトラックでおなじみのボルボなのである。同社では長くオフロードダンプを手がけてきたが、今回10年ぶりにフルモデルチェンジを行い、新型モデル6種の発売を開始した。
ボルボのオフロードダンプトラック画像はこちら
オフロードダンプは閉鎖空間で用途を限定して使用する建設機械なので、作業性能を重視した単純な機械だと誤解されることもあるが、それはとんでもない誤りだ。確かに、公道ほどまわりに障害物が多くないといえないこともないが、使用場所は未整地の過酷な環境にあるオフロード。運転席はビルの2~3階程度の高さがあるから、車両まわりを目視確認するのは簡単ではない。
そこで、未整備の悪路をスムースに走破するべく以下の装備を搭載している。
・オフロードで走行性能を最適化する自動トラクションコントロールシステム
・駆動方式を必要に応じて6×6や6×4に自動で切りかえるシステム
・全地形対応型ボギー
・油圧機械式ステアリング
・下り坂での速度制御システム
・路面や走行状況に応じて最適なギアを選択する予測変速機構
・転倒防止システム
これらの機能により、凹凸の多い地形でも優れた安定性を発揮して、安全な運用が可能になっているのだ。
同時に、オペレーターの快適性や操作性にも配慮がなされている。手すりや足場を最適化して乗り降りのしやすい構造にしたほか、高性能カメラや照明を駆使して安全確認などを行いやすくした。また、コクピットには必要な情報を集約的に表示できるディスプレイを設置し、動的な計器クラスタはハンドル前に配するなどして、オペレーターが効率的かつ安全に操縦ができるようになっている。
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先にも触れたように、ダンプトラックは閉鎖空間で限定された運用が行われていることもあって、ほかの車両より自動化・システム化に関する技術の導入が進んでいるのだ。本車両では、積載量をリアルタイムで確認するシステムや、ソフトウェアのアップグレード対応といった機能がその代表といえるだろう。
さらに進んだ技術として、遠隔操作や自動運転の運用が行われている現場も存在している。閉鎖された未整地の現場を、オペレーターを乗せることなく自動で走行をして、安全・確実に土砂などの運搬や積み下ろしをしているのだ。見た目には粗野で荒々しい感じがするものの、中身は先進技術の詰まった高性能な最新の機器である。いずれ、SFアニメに出てきたような作業用レイバーなどに、進化するようになるかもしれない。