海外に比べてプロ意識の高い日本のタクシー運転士……もこの先は変わる? 人手不足とDX化で職人技が失われる可能性 (2/2ページ)

DX化は避けられないが最後は個々人のモチベーション次第

 今後は即戦力として、異業種からの未経験者や社会人経験もない若手などの積極的雇用を進めないと、いまの働き手不足はますます深刻になってしまう。ベテラン運転士との技量の差を縮めるには運行業務に関してもDX(デジタルトランスフォーメーション)化は待ったなしともいえよう。プロが使うにふさわしい精度の高いカーナビの積極的導入もますます進んでいくことになるだろう。

 ただ、その使い方には課題も当然ある。先日インドネシアの首都ジャカルタでタクシーに乗り、ジャカルタ近郊都市まで移動する途中、土地勘のない筆者でもずいぶん時間がかかるように感じ、いつまでたっても高速道路に入らないので同行者が遠まわりしているのではないかとドライバーに聞くと、「グーグルマップに従っているから問題ない」といってきた。それでも同行者が「ほかにルートはないのか」などと聞いていると、「うるさい」とか、「嫌ならここで降りろ」といいだし車内で大喧嘩に発展してしまった。インドネシア以外でも筆者がよく訪れるタイでも、いまどきはグーグルマップなどのルートガイドに頼りきるドライバーが大半となっている。

 アメリカではそもそも道を知らないだけではなく、英語も話せないドライバーも多い。むしろ、ライドシェアサービスのほうがサービスが優れている場合もある。空港まで利用した時も「この時間出発口(2階)はかなり混んでいるので、到着口(1階)で降りてエスカレーターで上がったほうがいい」として到着口にクルマをまわしてくれるなど、ベテランタクシー運転士のような対応を見せてくれた。

 現状プロ意識の高い運転士が日本では目立っているのだが、働き手不足解消のためもあり、どんどん運転士に必要な二種免許の取得緩和、そして東京都内(23区及び武蔵野・三鷹市地域)ではタクシー運転士になるために必要だった地理試験が廃止されている。つまりこれからは、タクシーやバスを運転しているからいって運転士の誰もがプライド高くプロに徹しているというわけではなく、運転士個々人のあくまで価値観のもち方次第になっているということを知っておかないと、いらぬクレームをつけるなどお互い不快な思いのなか利用することにもなりかねない。

 プロを自覚している運転士は運転士のなかでもリーダー格になり、タクシーでは富裕外国人の宿泊が多く長距離など「おいしい仕事」を得やすい外資系五つ星ホテルで客待ちできるなどするので、見極めはそれほど難しくないものと筆者は考えている。

 DX化が進み、一定レベルまではそれほど経験を積まなくとも技術的な問題は解決されていくことになる。ただそこから先は、やはり個々人でどこまで自分の仕事に対して興味をもっているかで差が出てしまうのは、DX化が進む以前と変わらない。サービスレベル全体の底上げが行われるものと考えたほうがいいだろう。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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