速さはパワー・ウエイト・レシオだけでは決まらない
これほどエンジン性能の差が大きければ、スポーツカーとはいっても速さがずいぶん違ったのではないかと思うはずだ。しかし、自動車レースの場では好敵手として興味深い競い合いをしていたのである。
なぜそうした戦いができたのか。そのひとつの背景といえるのが、パワー・ウエイト・レシオだった。
ホンダS800は圧倒的エンジン性能の高さを誇ったが、車両重量は755kgであった。対するトヨタ・スポーツ800は、580kgでしかない。ホンダS800に比べ20%以上軽かったのだ。ここからパワー・ウエイト・レシオを計算すると、ホンダS800が10.78kg/PS、トヨタ・スポーツ800は12.88kg/PSになる。ホンダS800のほうがパワー・ウエイト・レシオでもなおよい数値だが、トヨタ・スポーツ800は軽さのほかに、空力のよさも特徴のひとつだった。
トヨタ・スポーツ800のサイドビュー画像はこちら
丸みを帯びた車体の造形は見るからに空気抵抗が小さそうで、試作車の段階では小型飛行機のキャノピーのような客室の形状だった。
つまり、トヨタ・スポーツ800はパワー・ウエイト・レシオで測れる加速性能でまだホンダS800に及ばない面があったとしても、空気抵抗の少なさにより、直線での最高速度の伸びはよかったのではないか。また車体の軽さは、カーブの通過速度も速めたのではないか。
レースで活躍するトヨタ・スポーツ800画像はこちら
クルマの速さを、パワー・ウエイト・レシオだけで決めることは難しいが、それでも、加速のよさの比較には活かせる。そのうえでクルマの速さとは、加速性能に加えて空気抵抗の少なさや、カーブを曲がる速さも関係し、総合的な性能の調和が大切なのである。