規制強化は仕方ないが……
その運送会社に勤める前は違う運送会社で4トントラックに乗ったり、自分でとある店舗の運営をしたりしていた。そのため、初めて速度抑制装置が装備された大型トラックに乗ったときは、激しい違和感と窮屈さを感じることとなった。なにが窮屈かといえば、やはり速度が出せないというところ。
もちろん法令で定められた最高速度は遵守しなければならないのだが、仕事として大型トラックのハンドルを握っている以上、綺麗事ではやっていけない。時間に追われながらも速度が出せないという状況は、とにかくストレスを感じたものである。とくに、一定の速度で走ることができないサンデードライバーに泣かされた。イライラさせられることによって睡魔が吹き飛ぶという恩恵を受けたのも、皮肉なものだった。
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速度を出すということは、おのずと運転に対して緊張感が芽生えてくる。しかし速度が90kmしか出せないことにより緊張感が解き放たれ、眠気を誘発するのだから始末が悪い。実際、速度抑制装置の影響で発生した睡魔による居眠り事故もあるのではないかと考えている。その反面、速度が出せなければ運転中の疲労が軽減されたのは事実。
それゆえに悪いことばかりではないのだが、荷主側の時間厳守というスタイルが変わることはなかったため、結局のところドライバーに負担と責任を押し付けるだけのシステムであると感じたものである。速度が出せないとなれば休憩時間を削るしか時間を稼ぐ手段が存在しないため、以前よりも過酷になったと痛感したものだ。
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また、安全面にも問題がある。事故を回避するために必要な手段とは、減速だけではないからだ。ときにはアクセルを踏んで加速することも、危険回避には有効な手段だからである。それを奪われてしまったことも、個人的には大きなマイナスだと感じるようになった。
とはいえ、そのような規制が強化されてしまったのは、大型トラックによる重大な事故が多発したからにすぎない。そして、ハンドルを握る以上いつ事故の加害者や被害者になってしまうかわからない。
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だから文句をいえる立場ではないのだが、少なくともまた大型トラックに乗るという想いが薄れてしまったのも事実。人手不足に悩まされている業種であるが、そのような窮屈な環境のなかで眠気に耐えながら仕事に励み、かつ見返りが少ないとなれば誰もやりたがらないだろう。せめて稼げるようになることを、トラックを愛する者として切に願う次第である。