【試乗】「これでもう十分」からさらに進化したヨコハマのスタッドレス! アイスガード8は「体感できるレベル」で凍結路も雪道も走破性が上がっている (2/2ページ)

乗り比べれば性能の違いは一目瞭然

 今年の春前、北海道にある横浜ゴムのテストコースで先行試乗させていただいたのだけど、出来ばえはじつに素晴らしかったのだ。仮に理屈を知らなかったとしても、冬場にはスタッドレスタイヤが必須という人であれば、一発でわかるだろうな、と思えたくらいに。

 氷上、雪上ともにほとんどのカリキュラムを先代であるアイスガード7と比較するかたちで走らせることができたのだけど、アイスガード7で走ってるときには「これで文句なし、十分でしょ」と素直に思えるのに、次にアイスガード8で走ると必ず「やっぱりこっちだよな」と感じられる。それくらいハッキリした違いがあった。

 まずは多くの人が気になってるだろう氷上性能から触れていこうと思う。氷上で行ったのは、ブレーキングとハンドリングを試すテスト。どちらもアイススケートのリンクのような屋内氷盤施設で、まったく同じ車種の同じグレードに、アイスガード7とアイスガード8の同サイズのタイヤを履かせての比較テストだった。

 まずはブレーキング、氷上制動比較から。これは定められたスピードで走り、定められたポイントでフルブレーキングを開始し、その制動距離を比較するもの。クルマが同じ、速度も同じ、ブレーキングポイントも同じ、そして当然ながらABSがフルに利くわけだから、制動距離の違いのほとんどはそれぞれのタイヤがもつ基本的な氷上性能が生み出すもの、といっていいだろう。

 新旧それぞれ何度かずつ試してみたのだけど、そういうテストなのでタイヤごとの制動距離はさほど変わらずで、アイスガード8は先代に較べて30km/hからではざっくり2.5m、40km/hからでは同じく1mほど短い距離で停止することができた。この数字はかなり大きいと思う。

 いや、アイスガード7だって決して悪くないのだ。肝心なフィーリングも、ゼロ発進での駆動、スピードコントロール、そしてブレーキペダルを踏んだときの制動の立ち上がりともに、かなりの扱いやすさを実感できていた。が、アイスガード8のほうでは、それらがさらに一段階高いところにあるように感じられた。とくに氷を掴むというか氷に貼りつくというか、その実感がよりハッキリしていて、頼もしさすら覚えたものだった。もちろん過信は禁物というのは大前提だけど、安心感が大いに増している。

 ハンドリングについては、円状の旋回路をグルグルまわるかたち。といっても、スピードはせいぜい20km/h+αといったところ。このテストではラップタイムも計測していたのだが、走れる周回数には限りがあるので、僕はむしろそれぞれいったい何km/hで走れるんだ? それをちょっとでも越えたらどうなるんだ? なんて考えながら走ってみた。

 アイスガード7では、姿勢を乱さず安定して綺麗に旋回できるたのは21km/h、対してアイスガード8は23km/h、といったところ。たった2km/h程度だけど、じつはこれも大きい。何せ、どちらもそこから1km/hでも速度を上げようとすると、フロントがグリップを失いはじめて外側にはらんでしまうくらい滑りやすいのだから。

 そして速度を上げようとするとフロントが逃げようとするのは共通してるのだが、問題はそのときのフィーリングと挙動。これまたアイスガード7で走ったときには「これで改良の余地ってある?」ぐらいに感じてたのだけど、アイスガード8を履いたクルマに乗り換えたら、やっぱり違う。いわゆるグリップ感、接地感、そして操舵感のすべてにおいて、クッキリと一枚上手なのだ。姿勢を乱したあとのリカバリーも、こちらのほうがしやすかった。懐の深さというか広さというか、そこが大きくなってる印象なのだ。

 と、氷上では確実にパフォーマンスが引き上げられてることが体験できたわけだが、もうひとつ重要な雪上ではどうだったか。まずはアイスガード7とアイスガード8での新旧比較をパイロンスラロームと直線でのブレーキングで行った。

 ここでも先代となったアイスガード7のレベルの高さが実感できた。発進時からしっかりと雪を噛んで優れたトラクションを感じさせてくれたし、ステアリングを切り込んだときの操舵感も良好だし、路面の状態もちゃんと伝わってくる。アクセルペダルの動きに素直に呼応して、雪を掻くようにして前へ進み、気もちよく曲がり、不安なく停まる。

 対するアイスガード8はどうだったかといえば、雪を掻くというよりも、圧雪と柔らかくコンタクトしながらしっかりと貼りついて、さらにしっかりと加速し、曲がり、制動する印象。もちろん限度を超えるような運転をすればフロントが逃げたりリヤが滑ったりするのはアイスガード7同様なのだけど、そこに至る前の粘り強さ、その瞬間のわかりやすさ、そこから先のコントロール性も引き上げられてる実感があった。

 その実力は、ハンドリングコースでの走行で、さらに強く実感できた。アイスガード8のみでの走行だったのだが、2通りのコースでハイパワー+後輪駆動のスポーツカー、前輪駆動のハッチバック、4WDのスモールSUV、後輪駆動のハイパワーBEV、前輪駆動の軽BEVといったさまざまなタイプのクルマを走らせることができた。

 クルマによって基本的な特性が違うから、もちろんパートごとの印象もそれぞれ異なっていたりはしたのだけど、すべてのクルマに共通していえるのは、駆動のしっかり感が強く、それがちゃんと伝わってくること、曲がるときの操舵感がクッキリしてること、滑りにくく曲がりやすいこと、滑るときの挙動が穏やかなこと、滑ってからのリカバリーがしやすいこと。いうまでもなくこうした路面では簡単に限界を突破してしまうから、ドライバーはかなり慎重に、様子をうかがいながらドライブする必要があるわけだが、しっかりマージンを考えながら走る限りでは、とても安心感が高く、かなり安全に走り切ることができる。こうしたところでのドライブも楽しめる、といってもいいと思う。

 横浜ゴムのアイスバーンや雪道へのこだわりには、心から感服した。もし僕が路面の凍りがちな積雪地帯に住むことになったとしたら、まちがいなくアイスガード8を選ぶ。


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嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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