出すそばから二酸化炭素を回収できればエンジン車でもよくない? いま自動車メーカーが取り組む「CO2キャプチャー」とは (2/2ページ)

自動車メーカーが研究を重ねているが課題は山積

 ただし、CO2キャプチャーには課題が多い。排ガスからのCO2の回収は、車載できることが最低条件であり、装置のサイズを考えるとCO2吸着物質を用いるというアプローチが妥当だ。CO2吸収物質としては、水酸化カリウムなどの液体吸収剤と、多孔質な結晶物質のゼオライト系の固形吸着剤が有力候補となる。傾向としてCO2回収率は液体吸収剤が有利だが、ユニットの重量やサイズをコンパクトにできるのは固形吸着剤といわれる。

 しかしながら、車載するCO2キャプチャー技術の開発が本格化したのは2020年代であり、技術的な進歩が期待できる分野である。現時点での吸着物質の特性によって最適解が導かれると考えるのは早計だろう。

 先日、スズキが開催した「技術説明会2025」においても、CO2キャプチャー技術の開発が進んでいることが発表された。既存モデルに後づけすることで、排ガス中のCO2を回収、それを農業(ハウス栽培など)に活かすことで、カーボンネガティブと食料確保という両面において貢献できるテクノロジーになるという。

 ただし、プレゼンテーションのイラストからもわかるように、CO2回収装置はトラックの荷台幅に相当するほど巨大であり、現在の排ガス処理装置のようにコンパクトにするには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 また、エンジンにこだわる自動車メーカーとして知られるマツダも、ゼオライト系の固形吸着剤を使ったCO2回収技術の開発を進めている。詳細は省くが、実験室においては『WLTCモード走行において約50%のCO2を回収できることを確認できた』というから、リアルワールドでの連続的な回収の実現に近づいている。

 CO2キャプチャー技術が究極的に進化すれば、エンジンが吸気した大気に含まれるCO2までも回収することが可能となり得る。大気から回収したCO2で作られたe-fuelが大前提だが、CO2キャプチャー技術は「走っているだけで温室効果ガスを減らすクルマ」を実現するためのキーテクノロジーとなる。

 複数の自動車メーカーが、CO2キャプチャーの開発を進めているという事実に、エンジン車と環境対応が両立する社会の実現に向けた期待が高まるのは筆者だけではないだろう。そして、CO2キャプチャー技術は、エンジンを好む自動車ファンにとっても希望の光となることは間違いない。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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