「安いから」じゃなく「総合的にお買い得」なのだ! たとえ関税15%でも北米で日本車は売れ続ける!! (3/3ページ)

アメ車はラインアップを早々にSUVへシフト

 ところが最近は「日本車対抗」や「ジャパンキラー」といったノリはアメリカン・ブランド3(いまは弱体化によりビッグ3とは呼ばない)からは感じられない。

 アメリカン・ブランド3ではすでに、カローラやカムリのような実用セダンは、シボレー・マリブとダッジ・チャージャー(ハイパフォーマンス仕様除く)ぐらいしかなく、ボディサイズにかかわらずセダンタイプは日系を中心に韓国、ドイツ系に事実上「お任せ」となっている。モデルラインアップはクロスオーバーSUVをメインとし、ピックアップトラックと、それの派生SUVあたりに絞り込んでいる。

 SUV系は日系ブランドでも人気が高いのでラインアップが充実しているのだが、そもそも現状ではアメリカ車ユーザーと日本車ユーザーはあまり被ることもないのである。単純に購入価格でいけばアメリカン・ブランド車のほうが値引きも含め実勢価格では日本車より安いといっていい。それなのに日本車の人気が高いのはなぜかというと、そもそもアメリカでは新車を現金一括で購入するケースはまずない。ローンあるいはリースにて購入するので、再販価値の高いクルマのほうが、月々のリース料金をセーブすることができるのである。

 ローンでは完済してから乗り換えるというケースが少なく、支払い途中にて売却価格で残債を相殺もしくは許容範囲まで残債を減らすことができた段階で、新規にローン(乗っていたクルマの残債を新車のローン元金に合算させる)を組んで乗ることを繰り返すので、そのため車両価格自体はアメリカン・ブランド車より高めであったとしても、再販価値が高いことで日本車に人気が集まる。もちろん、品質がよく燃費性能に優れるという点でも選ばれるのである。

 アメリカ車に乗るひとは、ローンの支払い履歴があまりよくなく金利や融資額で好条件が提示されにくいひとや、そもそもアメリカ車好き、愛国的思想、場所によってはアメリカン・ブランドに勤務している知人などからの縁故購入など、「訳あり」といった事情もあるようだ。

 レンタカーでは、とくにアメリカ以外の国からきた観光客は、せっかくアメリカに来たのだからとアメリカン・ブランド車の奪い合いにもなるようだが、アメリカに住み日々生活しているひとは、都市部ほど壊れにくく、品質よく、燃費性能が抜群によく、そして再販価値の高い日本車を当たり前に選ぶようになっている。

 ただし、沿岸部ではなく内陸部になればなるほど、販売ネットワークの関係もあるのだが(日本を含む外資ブランドは弱くなる)、沿岸部との嗜好性の違いもあり、ピックアップトラックなどがよく乗られたりもするのでアメリカン・ブランド車がそれなりに目立ってくるようだが、そのような地域でも主要都市では日本車が目立つようになっている。

 いまのような騒ぎの前、韓国車は米韓FTA(自由貿易協定)により、アメリカへ車両輸入時には関税はかからなかった。一方で日本車は2.5%の関税がかかっていたが、圧倒的に日本車がよく売れていた。今後日本は15%で落ち着きそうだが、それでもやはりハイブリッドを得意とする日本車を購入し、購入後のガソリン代負担の軽減や再販価値の高さを考えれば、まったく販売に影響がないとはいえないが、それでも日本車の売れ行きが大きく落ち込むことはないものと考えている。

 アメリカで日本車が売れているのは安いからではなく、総合的な判断で「お買い得感が高い」からであり、現金ではなくローンやリースで新車を手に入れているところも、売れ行きに大きな影響を及ぼさないものと筆者は考えている。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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