「リコール」一発で企業が倒産するほどのダメージを負うこともある! いま自動車業界のリコール規模が大きくなっている背景 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■リコールに関わる費用は企業が負担するもので怠れば刑罰対象となる

■部品起因の事例が多く下流メーカーや販売店にも大きな負担がかかる場合が多い

■開発短縮と原価低減が進む一方でグローバル化でリコール規模は拡大している

リコールは件数も規模も増している

 リコールとは、クルマの設計や製造に不具合があったとき、その原因や改善の措置について使用者へ通知する制度をいう。また国土交通省も、そうした情報を入手した場合は、必要な措置を行うよう企業へ勧告する。

 リコールに関わる費用は、使用者への通知など含め企業の負担だ。使用者に費用負担はない。もし、リコールを怠った場合は、1年以下の拘禁刑または300万円の罰金が科せられる可能性がある。

 違反行為がなくても、リコールの対象車両の数が多くなれば、企業にとって大きな費用負担になる。単に原因の追及だけでなく、対策部品の製造と、生産する設備などへの改善や調整なども行わなければならない。販売店では、通常の点検整備以外に、リコール対応の作業を強いられることになる。

 世界的に大規模なリコールとなったのは、10年ほど前の日本製エアバッグの事例だろう。対象車数は、米国内だけでも4000万台以上とされた。その結果、エアバッグメーカーは倒産した。

 そこまで大規模な事例でなくても、リコールの件数は増加傾向にある。対象となる車両の台数も規模が大きくなっている。それらの費用は企業負担となるので、倒産の可能性も出るわけだ。

 そこで企業は、リコールの損害保険に加入することになる。損害保険会社は、リコールによってどういったことが起こるかを調査し、それに見合った契約内容を検討する。契約内容に沿ったリコールであれば保険での対応が可能になる。とはいえ、事前の保険料の支払いは生じる。

 ほかに、毎年の利益のなかから、あらかじめリコールなど無償での部品交換や整備などに対処するための予算を設定しておく方法もあるようだ。これは一種の節税対策になる。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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