ハイブリッド車は内燃機関車と同じ馬力でも特性がまるで違う
さて、このシリーズ・パラレル方式を1歩踏み込んで考えると、内燃機関の特性に応じてモーター動力の可動域を設定することができ、また内燃機関の特性によってモーター動力のアシスト度合いも変えられるため(というより変えるのは当然)、両動力の最適な特性を前提にシステムの作動がプログラムされている。
だから、同じメーカーのシリース・パラレル方式でも、エンジンが異なったり、車両性格が異なったり、車両重量が異なったりするような場合には、当然ながらシステム出力は異なってくるし、エンジンに対するモーターの効かせ方も違ってくる。
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ただし、たとえばシステム出力100馬力のHVモデルとガソリンエンジン100馬力のモデルとでは、最大出力は同じでも出力特性はまったく異なってくる。ガソリンエンジンの100馬力はピーク値だが、エンジンとモーターの合成出力で100馬力を得ているHV車の場合は、幅広い回転域(エンジン回転域)で100馬力を発生させることも可能だからである。
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この特性、冷静になって考えてみると、環境性能(燃費性能)を重視したハイブリッド車ながら、同じ出力値をもつ内燃機関搭載車より格段に優れた動力性能を備えることができる……ということになる。
モーター動力恐るべしなのだが、たとえば、その端的な例は、トヨタがサーキットレースで見せたル・マン用ハイブリッドプロトのTS050といえるだうか。エンジン出力520馬力、前後ふたつのモーター出力が480馬力、合成出力、すなわちシステム出力1000馬力の仕様で、規定によりハイブリッドシステムの稼働領域が制限されていたにもかかわらず、内燃機関搭載車ではあり得ない超絶した加速性能を示していた。
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それまで、ハイブリッド車は環境性能、燃費性能を良化させるための車両という先入観をもっていた市場に、内燃機関とモーター動力の組み合わせは、とんでもない高性能を実現することになる……ということを身を以て証明した典型例である。
市販車のシステム出力は、内燃機関単体の出力特性とは大きく異なり、同じ数値、あるいはそれ以下でも動力性能、環境性能(燃費性能)ではるかに優れる、と受け取って間違いない。そしてその表記が、メーカーの発表値に頼らざるえないことは、説明してきたとおりである。