史上最高の猛暑だった2025年の夏! それでも昭和オヤジが心配する「オーバーヒート」に陥るクルマを見かけないワケ (2/2ページ)

補器類やエンジン本体の進化も大きい

 ハイブリッドカーが増えてきたころから、LLCを循環させるウォーターポンプの電動化も進んでいます。ご存じのように、かつてはウォーターポンプもクランクシャフトによって動かしていました。つまり、エンジン回転数が低いときにはLLCの循環も遅くなっていたのです。

 頻繁にエンジンが停止するハイブリッドでは、クランクシャフトによってウォーターポンプを動かしていては十分な冷却性能を発揮できません。その対策として電動ウォーターポンプの採用が増えていったのです。クーリングファン同様、電動化することでウォーターポンプもエンジン回転数と無関係に、水温を維持するための理想的な流量を実現することができます。これも冷却系の性能アップにつながっています。

 燃費を重視したエンジン自体の進化も見逃せません。燃料消費を減らすためにエンジンの熱効率を上げることは、排熱が少なくなることにもつながります。エコカーは冷やすべき熱量が減っていると捉えれば、最近のクルマがオーバーヒートしなくなっているのは自然なことなのです。

 このように、無駄な発熱を減らし、適切に冷やすメカニズムが進化したことでオーバーヒートを見かけることが少なくなったといえます。

 実際、かつての乗用車はどんなに安価なモデルでも水温計を装備していました。その針の様子を見て、オーバーヒートの兆候を感じることは、ドライバーに求められるスキルのひとつだったのです。

 しかしいつのころからか、水温計はマストではなくなり、いまや水温が冷えている状態を示す青いランプと、オーバーヒートを示す赤いランプが備わるだけになっています。

 機械の破損やメンテナンス不足によるトラブルがなければ、ほぼオーバーヒートとは無縁になったという自動車メーカーの自信が、水温計を省略することにつながったのでしょう。

 逆にいうと、水温計を備えているような旧車・ヒストリックカーにおいては、オーバーヒートを早めに察する能力や、そもそもオーバーヒートさせないような運転スキルが必要ともいえます。

 そんなスキルのひとつが、真夏にヒーターをガンガン使うというもの。ヒーターの熱源はラジエターですから、暖房を全開にすることでキャビンに熱を放出、それでエンジンを守るという修行のようなテクニックもありました。

 その時代をリアルに知っている者からすると、「オーバーヒート」が死語のようになっているほど技術進化を遂げた昨今は、本当に素晴らしい時代になったと感じます。

 あなたは、猛暑だった2025年の夏に、オーバーヒートを経験しましたか?


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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