この記事をまとめると
■道路交通法における免許証提示義務は限定された条件下のみ発生する
■無免許・飲酒・過労などの疑いがある場合に限り提示が義務となる
■違反や事故がなければ提示は任意であり拒否しても違法ではない
免許証を提示しなければならないかどうかは場合による
「お急ぎのところすみません。検問をやっておりますので、免許証を見せてください」と、警察官にいわれたことはないだろうか? ほとんどの人は素直に免許証を見せるだろうが、じつは検問時、免許証提示をする「義務」はない。
免許証を警察官から提示するように求められて、見せなければならないのは、どのような条件なのか確認しておこう。
まず、道路交通法95条2項。
免許を受けた者は、自動車等を運転している場合において、警察官から第六十七条第一項又は第二項の規定による免許証の提示を求められたときは、これを提示しなければならない
ふむふむ。しかし、これだけでは肝心の条件がわからない。というわけで、道路交通法67条1項を見てみよう。
警察官は、車両等の運転者が第六十四条第一項、第六十五条第一項、第六十六条、第七十一条の四第三項から第六項まで又は第八十五条第五項若しくは第六項の規定に違反して車両等を運転していると認めるときは、当該車両等を停止させ、及び当該車両等の運転者に対し、第九十二条第一項の運転免許証又は第百七条の二の国際運転免許証若しくは外国運転免許証の提示を求めることができる
これまたさっぱりだが、まとめると64条は無免許運転、65条は飲酒運転、66条は過労運転のことで、これらに違反して運転していると警察官が認めたときに限り、当該車両等を停止させ免許証の提示を求めることができるという意味だ。
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この条件に当てはまれば、運転者には免許証の提示義務が発生するので、黙って従う必要がある。
逆にそれ以外のシチュエーションでは、免許証の提示は任意。ましてや警察官に免許証を渡す必要性はまったくない。
ちなみに上記の71条の4は二輪車について、85条は大型・中型自動車に限っての条文なので、四輪の普通車のドライバーには無関係。なお、実際に交通違反や事故をしたときは、道路交通法67条2項によって、警察官は免許証の提示を求めることができることになっているので、このケースでも提示を拒否するのは違法となる。
したがって、違反もなく、事故も起こしていない場合は、検問であっても免許証を提示する義務はない。無免許、飲酒、過労の疑いがないのに、免許証の提示を求めるとしたら、それは警察官側が違法であって、ドライバーとしては検問で免許証を見せろといわれたら、「なんの違反の容疑ですか?」と問い返す権利がある。
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「無免許です」といわれれば、窓越しに免許証を見せて、その疑いを晴らせばいいし、それ以外であれば、「お酒飲んでいませんし、疲れてもいません」と宣言すればOK。
身に覚えのない疑いをかけられて免許証を見せろといわれ、警官に渡してしまったりすると、どんな難癖がつけられるかわからないので、検問などではまず提示の根拠を問いただし、納得できればガラス越しに免許証を見せるところまでで勘弁してもらう。それ以上は違法な要求なので、突っぱねても構わない。
やましいことがなければ免許証ぐらい見せても問題ないと思うかもしれないが、そもそも義務ではないことを求められているわけだから、用心に越したことはないだろう⁉