V12かV8か……そして電動へ! フェラーリの歴代フラッグシップの「パワーユニット」を辿る (2/2ページ)

電動化によりさらなる高みへ

 その後はF40に続くスペチアーレが、V型12気筒エンジンを採用したことで、フェラーリのフラッグシップは再び12気筒モデルへと回帰することになるが、その一方でフェラーリは、V型8気筒エンジンの高性能化に積極的な姿勢を貫き続けた。2019年に発表された「F8トリブート」では3902ccのV型8気筒ツインターボエンジンで720馬力の最高出力を実現。これは同時期のV型12気筒モデル、「812スーパーファスト」の6496cc自然吸気エンジンに対してあと80馬力に迫るスペックであり、最高速は両車ともに340km/hを可能とすると発表されていたのだ。

 この2019年には、フェラーリのV型8気筒モデルのさらなる進化版ともいえる「SF90ストラダーレ」がリリースされるが、こちらは3990ccのV型8気筒ツインターボエンジンに3基のエレクトリックモーターを組み合わせたPHEV。最高出力の1000馬力は2024年に6496ccのV型12気筒自然吸気エンジンを搭載して誕生した「12チリンドリ」の830馬力を上まわるものだった。最高速にはいずれも340km/hというデータが掲げられている。

 また、このSF90ストラダーレは、先日「849テスタロッサ」にモデルチェンジされ、パワーユニットの基本構成は共通するものの最高出力はさらに1050馬力にまで引き上げられた。

 そして現在、フェラーリのフラッグシップとして絶対的な存在といえるのは、2025年から2027年にかけて限定生産される新型PHEVスペチアーレの「F80」だ。パワーユニットは296シリーズと同一の2992ccの排気量を持つV型6気筒ツインターボエンジンに、やはり3基のエレクトリックモーターを組み合わせたもの。最高出力はエンジンが900馬力、エレクトリックモーターは300馬力とされ、システム全体では1200馬力という驚異的な数字を発揮する。最高速の350km/hにも十分な説得力がある。

 フェラーリにとって、もはやV型12気筒モデル=フラッグシップという時代は、少なくともその性能を評価軸とするのならば完全に過去のものになった。

 動力性能とともに環境性能も追求していかなければならないなかで、はたしてフェラーリからはこれからどのようなモデルが誕生していくのだろうか。多くのファンが待ち望むのは、やはり究極的な性能を誇るV型12気筒モデルであることは容易に想像できるところなのだが。


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山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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