かつて使われていた「有毒」の「有鉛」ガソリンはなぜ鉛が必要だった? 有鉛仕様の旧車にイマドキの普通のガソリンを入れたらどうなる (1/2ページ)

この記事をまとめると

■有鉛ガソリンンは成分中に鉛が含まれたガソリンのこと

■日本では鉛中毒事件により無鉛ガソリンに切り替えられることになった

■有鉛ガソリン仕様車で無鉛ガソリンを使うとバルブの密着不良を起こすことになる

昔のハイパフォーマンス車は有鉛ガソリン仕様だった

 現行のクルマには関係ないが、旧車の燃料で「有鉛ガソリン」と指定されている場合がある。現在のガソリンは、すべて無鉛ガソリンである。では、この有鉛ガソリンとは何なんだろう? 場合によって、現在では手に入らない有鉛ガソリン指定の旧車に、無鉛ガソリンを入れたらどうなってしまうのか、このあたりを考えてみたい。

 さて、そもそも有鉛ガソリンとは何なのか。ここから話を進めていこう。有鉛ガソリンンとは、文字どおり成分中に鉛が含まれるガソリンのことである。正確に表記すると四アルキル鉛のことで、ガソリンのオクタン価向上(アンチノック剤として)のため、バルブとバルブシート間に入って固体潤滑の役割を果たすため、ふたつの役割で含まれている。

 では、かつては常識的な存在だった有鉛カソリンが、なぜ現在のような無鉛ガソリンに置き換わってしまったのか? 答えは、大気汚染である。きっかけは1970年に新宿牛込柳町で大きく問題視された「鉛中毒」事件である。周辺住民の血液中から高濃度の鉛が検出され、その出どころが自動車の排出ガスだとわかった事件である。

 排出ガスに鉛が含まれない対策を、ということで実施されたのが無鉛ガソリンへの切り替えだった。ガソリン成分に鉛が含まれなければ、排出ガスとして大気中に放出されることはない。この無鉛ガソリンの使用は、段階的に行われた。まず、大多数のガソリンを占めるレギュラーガソリンの無鉛化からだった。生産車のバルブシートに鉛による固体潤滑の必要がない材質への変更が図られた。焼結合金製、リン青銅製やベリリウム銅製(一般的には焼結合金が使われた)などで、ガソリン成分に鉛が含まれなくてもバルブとバルブシートの密着に問題が生じることはなくなった。

 もうひとつの問題点、アンチノック性については、レギュラーガソリン仕様の一般車は圧縮比がそれほど高くなく、ガソリンオクタン価もそれほど高くなくても実用上問題はなかった。そのため、まずレギュラーガソリン車のエンジンが無鉛ガソリン仕様に変更された。一方、高圧縮比で高いオクタン価のガソリンを使用するハイオクタンガソリン車用には有鉛ハイオクタンガソリンがしばらくの間残された。


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