【試乗】ダンパーのオイルが変わると走りが変わる……ってホント? KYBの次世代オイル「サステナルブ」を試したらマジで激変して驚きしかない (2/2ページ)

オイルで走りの質感が1ランク上がる

 では、実際の走りはどうか。

 今回、トヨタ・ヤリスハイブリッドの中間グレード「G」のフルノーマル車=純正採用されている「プロスムース」を装着した車両と、作動油を「サステナルブ」に変更しただけで減衰力速度特性はまったく同じダンパーを装着した車両とを、比較試乗した。なおタイヤは双方とも新品で、175/70R14 84Sのヨコハマ・ブルーアースを装着していた。

 最初は羽田イノベーションシティ駐車場内を筆者ひとりで、約15km以下の低速で試乗。大小2つずつの段差を片輪で乗り上げる状況も設けられた。

 先にフルノーマルの「プロスムース」装着車に試乗したが、カーブを曲がるとスッキリしたレスポンスのよいハンドリングが感じ取れる。

 そして、大小2つずつの段差を片輪で乗り上げたときこそ相応のショックを乗員に伝えるものの、路面の細かな凹凸は充分綺麗にいなしてくれる。路面や車両の挙動の微細な変化を意識して感じ取ろうとしなければ、そこに凹凸があることに気づかないかもしれない。

 だが、「サステナルブ」装着車に乗り換えると、走りの質感がもう一段上がったのを、まさにタイヤひと転がりで体感できる。

 カーブを曲がると、ステアリングを切ったあとのヨーやロールの出方が穏やかかつリニアで、ハンドリングがスッキリしたものからしっとりしたものに変化。そして大小2つずつの段差を片輪で乗り上げると、衝撃のピークが丸められ、不快感が大幅に抑えられていたのだ。

 続いて、羽田イノベーションシティを出て、羽田空港近隣の公道で、筆者とKYBのスタッフ、WEB CARTOP編集部・井上の3人で試乗する。

 先に試乗したのは「サステナルブ」装着車のほうだが、アスファルトがひび割れた粗粒路の上を走行しても、ステアリングに微振動がほとんど伝わってこない。その一方で、フロアから足の裏、あるいはさらにシートを介してヒップに伝わる振動は激しくなった。

 騒音・振動・突き上げはひとつ消すとほかの発生源が目立つようになる傾向にあるため、端的にいえば「サステナルブ」によってバランスが崩れてしまったのだが、裏を返せばそれだけ「サステナルブ」が、フロントのタイヤからサスペンションを通じてステアリングに伝わる入力を、効果的にいなしているのだろう。

 なお、十字路が続く道で、後席に乗っていた編集部・井上が撮影のために降りても、乗り味の変化は少なく、しっとりしたハンドリングとしなやかな乗り心地を味わうことができた。

 しかし、最後に「プロスムース」装着車で公道に出ると、駐車場内で試乗した際よりも「サステナルブ」装着車との違いが大きいことに気づかされる。

 粗粒路を走行した際の振動はステアリングからも伝わる一方、フロアからの振動は相対的に低く感じられる。「サステナルブ」装着車に見られた、よくも悪くもチューニングカーらしいバランスの悪さは、そこにはない。

 一方でカーブを曲がると、ステアリング操作に対するヨーやロールの出方が「サステナルブ」装着車よりも早いため、より慎重な操作が求められる。必然的にカーブへの進入速度も「サステナルブ」装着車よりやや低くなった。

 加えて、編集部・井上が後席から降りたあとの、乗り味の変化が非常に大きかったのも印象的。リヤサスペンションへのプリロードが大幅に減少し、ダンパーの油圧力が出にくく摩擦が支配的になる微振幅域を多く使うようになったことで、リヤからの突き上げが明確に増加。車格がワンランク変わったかのような錯覚さえ受けた。

 すでにモータースポーツの現場には実戦投入されており、市販化の際には自動車以外の分野を含むすべての油圧製品へ応用される計画となっている「サステナルブ」。KYBによれば現状の製造コストは「プロスムース」に対し一桁ほど違うというが、量産化後はスケールメリットが拡大し、クルマ好きはもちろん普通のユーザーにも、ワンランク上の補修交換部品、あるいは新車装着部品として、安価に入手できるようになることを期待したい。


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遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

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