この記事をまとめると
■街路樹や道路に空いた穴のせいでクルマが破損したら国家賠償法に基づき行政に請求できる
■道路の管理者に「瑕疵」があった場合に適用されるので100%責任を負わせるのは難しい
■瑕疵の重さは状況によって変わるのでドライブレコーダーなどで証明することが大切だ
道路のトラブルでクルマが傷ついたら誰のせい?
国道、県道、市道など、いわゆる公道を走っているときに、飛び出していた街路樹に接触したり、道路が陥没していてクルマが傷ついてしまった場合、その修理代を道路の管理者=国や都道府県、市町村などに請求することができるのだろうか?
こうしたケース、じつは国家賠償法という法律が適用されるので、国や地方公共団体が、損害賠償責任を負う可能性が高い。
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実際、国家賠償法2条1項には「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責めに任ずる」と定めているからだ。
「瑕疵(かし)」とは、「本来あるべき品質や状態が備わっていない状態」を指す法律用語だ。つまり、道路の管理が不十分であったことが認められれば、道路管理者の責任が問われるということになる。ただし、「道路管理者側に瑕疵があったかどうか」については、道路管理者が100%の責任を負うことはかなりまれといっていい。
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多くの場合、運転者側の過失、たとえば前方不注意なども考慮したうえで、過失割合が算定され、いわゆる「過失相殺」になるのが一般的だからだ。
たとえば、道路管理者が、事故前に街路樹の手入れをしていたり、事故現場付近の道路をほぼ毎日巡回していたとすると、ちゃんと管理していると見做され、道路管理者側に瑕疵はないと判断されてもおかしくない。
反対に、道路の利用者から「道路に穴が開いている」「木が倒れている」「枝が伸びてクルマに当たりそうだ」といった通報が入っていたにもかかわらず、それを放置していたとなると、道路管理者側に瑕疵があったと認められるだろう。
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要するに、瑕疵の判断は道路の危険度によって変わると考えればいい。道路に飛び出している木が大きかったり、道路の穴が大きければ、危険度が大なので瑕疵も大きく、ドライバーから見て、道路の異常が発見しやすく、回避が容易なシチュエーションであれば、瑕疵は小さいことになる。
また、幹線道路や高速道路であれば、管理者の責任は重く、生活道路なら瑕疵は小さい。そのほかに、管理者の認識性が高いときも、瑕疵は大きいと評される。
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いずれにせよ、道路を管理する国や都道府県、市に賠償を求めるのなら、道路管理者の瑕疵を立証する必要があり、なおかつ、ドライブレコーダーなどで、ドライバーがいかに木や穴ぼこを発見、回避することが困難だったかを伝えなければ、道路管理者側が支払う保証額はかなり減額されることになるだろう。