期待される以上の実力を披露してくれたドーディチ・チリンドリ
ドライブを始めてまず驚かされたのは、ドーディチ・チリンドリのために新たに「F140HD」型へと進化した、フロントミッドシップされる6496ccのV型12気筒エンジンがもつ滑らかさ、そして実用域での魅力的なトルクフィールだった。
フェラーリ・ドーディチ・チリンドリの走行シーン画像はこちら
ちなみにこのエンジンの最高出力&最大トルクは830馬力&687Nmで、これは812スーパーファストと比較して最高出力では30馬力プラス(限定車の812コンペティツィオーネとは同一)、最大トルクでは31Nmほど低い数字になるが、トルク特性を見直したことで扱いやすさはより高まったとフェラーリは説明している。
フェラーリ・ドーディチ・チリンドリのエンジン画像はこちら
ドーディッチ・チリンドリの加速フィールは、812スーパーファストのそれと比較すると、かなりジェントルなものに感じられる。もちろん9500rpmをレブリミットとするF140HD型エンジンは、高速域では驚くほどの鋭さとパワーフィールでドライバーを圧倒してくれるのは確か。等長エキゾーストマニフォールドの採用を始め、さまざまなチューニングによって実現した素晴らしいサウンドもまた、フェラーリならではの演出であるのは当然だ。
全長×全幅×全高で4733×2176×1292mmというボディサイズは、見た目にはかなりの存在感を抱かせるものだが、実際にスポーツモードでドーディッチ・チリンドリをドライブしてみると、その大きさは想像していたほどに気にならないのがわかる。
フェラーリ・ドーディチ・チリンドリをドライブする山崎元裕さん画像はこちら
適度な手ごたえがあるステアリングはリニアな反応に終始し、コーナリングでは高いコントロール性と安定性にも感動させられる。もちろんその背景には、SSC8.0(サイドスリップ・アングル・コントロール)やABS Evo、PCV3.0(バーチャル・ショート・ホイールベース)、TC(トラクション・コントロール)、eDiff(電子制御デファレンシャル、6Dセンサーといった、フェラーリが誇る最新世代のデバイスが、常に最適な姿勢制御を行っているという事実があるのだが。
ドーディッチ・チリンドリがもっとも魅力的な走りを披露するのは、やはり高速道路でのクルージングだ。前で触れたV12エンジンのキャラクターに、これも812スーパーファストからはかなりマイルドな印象に変化した乗り心地が加わり、長時間の移動でも疲れを感じさせることなくドライブを続けることができるのだ。
フェラーリ・ドーディチ・チリンドリの走行シーン画像はこちら
ちなみにリヤハッチを開けば、そこには十分な深さがある270リットル分のラゲッジスペースが用意されているのがわかる。
フェラーリの最新12気筒モデル、ドーディッチ・チリンドリ。それは期待以上の実力を備えたGTにほかならなかった。
フェラーリ・ドーディッチ・チリンドリの諸元表画像はこちら