いま高速バスで問題となっている2席占有のための迷惑行為「相席ブロック」! 京王バスが逆転の発想で「2席ひとりじめシート」を打ち出した

この記事をまとめると

■長距離バスで隣席を直前キャンセルする「相席ブロック」の横行が社会問題となっている

■安いキャンセル料とスマホ予約の脆弱性が原因であり事業者を圧迫している

■京王バスは逆境を逆手に取って有料の「2席ひとりじめシート」という方策を打ち出した

バス会社に損害を与えるキャンセルを利用した迷惑行為

「相席ブロック」とは、2024年ごろから問題視されるようになった、長距離バスで発生している隣席の直前キャンセル問題のことだ。長距離バスは観光バス仕様の座席配置になっているため、多くは2列+2列で中央に通路がある4列シートになっている。この窓側と通路側の隣り合う2席をひとりで予約し、乗車直前に1席をキャンセルすることで、隣席を他人に購入されないようにしてその2席を独占し、ひとりでゆったり座ろうとするものだ。

 これは、高速バスの予約システムの脆弱性をついた手法といえよう。まず、キャンセル手数料がいつキャンセルしても100円程度と安いこと。さらに、予約・キャンセルがスマホ(インターネット)で簡単に完結することも大きい。ほかの交通機関に比べて、高速バスの直前キャンセル料が安い理由ははっきりしないが、競合が激しいことからその対策であったようだ。

 高速バス各社は、この問題に頭を抱えている。なぜなら、高速バスは鉄道や航空機に比べて定員が少ないために、キャンセルが少し出ただけでも収益に大きく影響するからだ。そこで、「相席ブロック」をしないように呼びかけるキャンペーンのほか、手数料の引き上げや予約期間の短縮など、さまざまな対策を講じ始めた。しかし、それでも「相席ブロック」をするユーザーはあとを絶たず、さながらいたちごっこの様相を呈している。

「相席ブロック」を行うことは使用する意思のない席を予約してキャンセルするために、バス会社に一定の損害を意図して与えていると解釈することができる。ゆえに、厳密には偽計業務妨害にあたるといえないこともない。しかし、立証の難しさに加えて、手間と費用がかかるわりには得られる賠償金は多くないのだ。抑止力を狙って告訴する手もあるが、効果には疑問符が付き、バス会社は八方塞がりの状態である。

 ところが、京王バスがこれを逆手に取った方策を打ち出した。それが、「2席ひとりじめシート」である。同社の新宿・渋谷から仙台・石巻路線の一部で実施され、通常のひとり席料金にプラス1000円・1500円(行先・発車時刻による)で隣り合う2席を占有できるサービスだ。さらに、同シート限定でロゴ入りネックピローのほか、アイマスク・おしぼり・耳栓・腰当て・ブランケットの提供がある。使用される車両は38人乗りのトイレ付きで、シートピッチが広くてUSBポートやWi-Fi設備もついているのだ。

 イソップ物語の「北風と太陽」ではないが、「相席ブロック」を不正として厳しく対処したとしても、スムースに解決するとは限らない。「2席ひとりじめシート」という新たな商品として売り出し、ユーザーの支持を得ることもまたひとつの解決方法なのではないだろうか。

 ただ、この席は鉄道のプレミアムシートのような通常料金に加算をしたものではなく、2席から減算をして売り出したものである。取りようによっては機会損失を発生させている可能性もあるため、今後は慎重に検証していかねばならない。

 とはいえ、高速バスでは3列シートや寝台バスなどさまざまなタイプが登場し、ユーザーの幅広いニーズに応えている。「2席ひとりじめシート」もそのひとつとして、多くの路線で活躍することが期待されているのだ。


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