EVが普及するだしないだ結局エンジン車はこの先どうなる? 内燃機関の存続は「燃料」次第だった! (1/2ページ)

この記事をまとめると

■多くの自動車メーカーは内燃機関から電気自動車へ新車販売を切り替える方針だ

■「e-fuel(合成燃料)」を使うことで内燃機関を引き続き使えるが普及までの道のりは遠い

■ポルシェの6ストロークエンジンやトヨタの水素を使ったエンジンにも注目が集まっている

本当にこのままクルマはEVだけになるのか

 自動車のパワーユニットが、ガソリン/ディーゼルによる内燃機関車から電気モーターによるEVに舵を切ったことは、すでに既定事実として広く認識されている。その理由は、内燃機関車の燃料となる化石燃料に含まれる炭素成分が、燃焼作用により二酸化炭素となって排出され、地球温暖化の大きな原因となるからで、走行に際して二酸化炭素を排出しない電気自動車に切り替えよう、という考えによるものだ。

 このため、化石燃料を使う内燃機関車の製造・販売は、2030年を目処(正確には、その実施時期は国や地域によって異なる)に中止しようという流れで推移しているが、本当に現状の内燃機関車には乗れなくなるのか? と不安に思う方も少なからずいることだろう。

 実際どうなってしまうのか、冷静に考えてみることにしたい。

 まず、燃料を燃やして二酸化炭素を排出するのは、なにも自動車だけに限った話ではない。発電所、工場と化石燃料を燃やしているところはすべて該当する、という事実だ。しかし、これらは人間が生活していく上で重要度が高い存在であるだけに、即座に化石燃料が使えなくなったらそれこそ死活問題になってしまう。もちろん、これらも対処しなければならないのだが、難易度としては自動車のほうが実施しやすく優先順位が先になった、というのが現実だ。

 では、自動車が採るべき選択肢はEVしかないのか、という話だが、このテーマに関しては、本項でも何度か触れてきたように、EV以外にも選択肢があることをその都度紹介してきた。とくに、世界規模で見た場合の大きな動きは、2023年ドイツ国会で承認された「e-fuel(合成燃料)」対応の内燃機関車なら2030年以降も生産・販売が許される、という国策規模での決定である。

 e-fuelは、大気中の二酸化炭素と水素を合成することで作られる人工的な「疑似石油燃料」といえるものだ。ポイントは、大気中の二酸化炭素を使って燃料を合成するという製造方法にあり、大気中から取り込んだ二酸化炭素を燃焼作用によって再び大気中に戻すことになるため、二酸化炭素の全体量はプラスマイナスの相殺勘定によってゼロ、というカーボンニュートラルの考え方だ。

 こうして作られた燃料の組成はガソリン/軽油と同等のもので、これまで使われてきたガソリン/ディーゼル機関がそのまま使えることを意味している。それならば、なにも大きなインフラ整備が必要なEVにあえて移行する必要はないのでは、と思ってしまうが、問題はe-fuelの供給量にある。非常に大ざっぱな伝え方となってしまうが、現代の原油生産量/消費量は、1日あたり45億トン強といわれている。

 この原油から、ガソリン/軽油/重油といった燃料が、具体的にどれくらいの割合で生産されているのかは推定困難だが、年間数千億トンもの燃料をe-fuelが肩代わりするのは、現状、到底無理な話である。正直なところ、1リッターあたりどれくらいの価格になるのかすら想像できないし、仮に供給可能な状態になったとしても、現在のガソリン、軽油並の価格になるかどうかは大いに疑問である。


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