燃料次第で内燃機関はまだまだ存続できる
一方で、理論上はe-fuelを使えば内燃機関はカーボンニュートラルと見なせるため、将来的な生き残りは十分可能である。
では、どのように発展するかという話だが、近年の内燃機関の動向を眺めれば、真っ先に高効率化が頭に浮かんでくる。より軽量コンパクトに、より少ない燃料でより大きな出力/トルクを発揮するエンジン像だ。ただ、こうした技術的な流れは、1800年代終盤に自動車用の原動機としてガソリン機関が使われ始めて以来、今日まで一貫して続くものといってもよいだろう。
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さらにうがった見方をすれば、ドイツでe-fuel機関の使用が認められた直後に、ポルシェが発表した6ストロークエンジンの特許取得は、今後内燃機関が生き残ることを想定し、その際大きなメリットを生む新方式を自社で保有しておきたい、という企業方針の表れと見てよいだろう。
こうした意味では、水素を燃料とするトヨタの水素内燃機関の存在も同様に受け止めることができる。e-fuelを燃料とするより技術的なハードルは一段も二段も高くなるが、トヨタは実用化に向け着実にその歩みを進めている。水素燃料は、構成元素を見ても水素のみと単純明快で、酸素と結び付く燃焼によって二酸化炭素を排出することはあり得ない。燃料タンクからエンジン燃焼室内まで、水素を供給する方式や構造はガソリン/軽油と異なるが、燃焼作用そのものがゼロカーボンである点は大きな利点である。
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e-fuel/水素の生産・供給に関して、地産地消の構図が当てはまるような状況になれば、理論上ではなく実用上の問題として内燃機関の将来性は明るく、おそらくEVとの併存関係になるのではないか、と思えてくる。本音をいえば、EVの価値、魅力は認めるが、内燃機関がもつクルマを操る楽しさは捨てがたい、という想いも強くある。