この記事をまとめると
■引退した路線バスをサウナに改造する「サバス」に静鉄バス版の3号車が登場
■静岡県産の木材を使った「茶畑風すのこ」で静岡らしさを演出
■今後はトラックや観光バスなどへのサバスの展開にも期待したい
静鉄バスを改造したサウナ付きバスの3号車が登場
引退したバスを待合室や喫茶店にするといったことはあるが、それらは車両が自走できる状態にはないことがほとんどだ。引退するぐらいだから古くなっていることに加えて、走る以上は車検や点検などのメンテナンスをしなければならない。すなわち、お金がかかるのだ。費用対効果を考えれば、走らせずに再利用をしたほうが安上がりなのである。
ところが、引退したバスをサウナに改造して走らせるというプロジェクトが立ち上がり、2022年に「サバス1号」が完成した。ベースの車両になったのは、兵庫県の神姫バスで活躍していた路線バス。完成後は西日本を中心に稼働していたが、東日本からの引き合いが増えたこともあり、2024年には東急バスの路線バスが「サバス2号」として登場した。
サバス2 号のフロントスタイリング画像はこちら
これら2台は定期運行をするのではなく、イベント車両として観光地やリゾート地に一定期間出向くといった運用がされている。たとえば「サバス1号」は、鳥取県琴浦町の「惑星コトラウィーク」に参加。同町の代表的な観光地である「鳴り石の浜」で、参加者が海の音や潮風を感じながらサウナを楽しんだという。「サバス2号」は、静岡県にある「東急リゾートタウン浜名湖」に登場。サバスの「蒸車プラン」として、サバスと施設のアクティビティの体験をセットにして提供した。
このように、各地で好評を得ている「サバス」の需要拡大を受けて、2025年には「サバス3号」が完成。今回ベースとなった車両は、静鉄バスで使用されていた路線バスだ。「サバス1号・2号」はそれぞれ、ベースとなった車両をモチーフにしており、路線バス時代に使用されていた部品を改造して使用するなどし、室内の各所に当時の雰囲気を感じられるような工夫がされていた。
サバス3号のフロントスタイリング画像はこちら
「サバス3号」はそれとは異なり、静岡の名産品であるお茶をテーマにして製作。利用者が座る部分は木製のすのこになっており、素材は静岡県産のものを使用した。これは、地域資源の有効活用を考慮したことによるものだ。すのこは段々になっており、後部から前部に向けて適度な傾斜が付けられている。このレイアウトは茶畑をイメージしており、従来の椅子型のものとは異なる趣がある。
すのこ部分は座ることもできるし、寝転ぶことも可能。くつろいだ状態から外の景色を楽しむことができるので、富士山を眺めながらサウナを楽しむといった、静岡ならではの体験をすることも夢ではない。外装は、静鉄バスの復刻デザイン。お茶の葉をイメージした深い緑色がレトロ感を醸しだし、なかなか渋い見た目になっている。
サバス3号の車内画像はこちら
サウナブームは現在も続いており、スパリゾートだけではなく一般の銭湯にも広く普及した。近年では、個人用の小型サウナも人気があるという。さまざまなサウナの楽しみ方があるなかでも、「サバス」はほかにはない体験が可能だ。今後、路線バスだけではなくトラック・観光バス・電車などをベースに展開すれば、さらに新たな利用法が生み出されるかもしれない。今後の事業展開に、大きな期待が寄せられている。