この記事をまとめると
■トラックの路上待機が社会問題となっている
■積み降ろし・待機・休息の三要因が路上駐車の背景にある
■荷主と行政の対応整備とドライバーの遵法意識が解決の鍵になるだろう
路上に停まるトラックが抱える「3つの事情」
いうまでもないが、道路は通行をするところであって、決して何かを置いておくところではない。すなわち、人の乗り降りや荷物の積み降ろしでもない限り、道路に車両をむやみに停めてはいけないのだ。もちろん、駐車禁止の制限がかかっていなければその限りではないが、無余地場所(車両の右側の車道上に3.5m以上の余地がない場所)に該当する道路は駐車が禁止されている。
にもかかわらず、倉庫・物流センター・商業施設の近辺などには、多くのトラックが一定時間駐車していることが少なくない。これには、大別して3つの理由がある。ひとつめは、荷物の積み降ろしである。これは、個人宅や小規模商業施設などに荷物を配達する際によく見られる。前述のように違法でない場合もあるが、ドライバーがトラックから離れれば違反になる可能性が高い。
荷物を積み下ろすトラック画像はこちら
2つ目は待機で、これは主に荷受け先・出荷先の都合に合わせて、着荷や積み込みの時間調整を求められるからだ。荷受け先・出荷先は相応の敷地がある工場や物流倉庫などだが、大型トラックを長時間何台も停めておけるスペースまでもっているわけではない。まして、荷物を積み降ろしするプラットホームの数は限られている。着荷や出荷が集中する時間帯には、入りきれないトラックは外で待たねばならないのだ。
3つ目が休息である。トラックの運行はドライバーの負担が大きいため、適切な休息をとることで疲労を軽減して交通事故を防ごうという考え方で、「430休息」という制度が設けられているのだ。これは、ドライバーが4時間を超えて運転する場合は、30分以上の休憩を取らなければならないと定めたもの。トラックの運行状況は管理されているから、駐車するところがなくても時間が来たら休憩をとらないとバレるので、やむなく路上駐車をすることがあるのだ。
路上で休息をとるトラック画像はこちら
このように、トラックの路上駐車にはドライバー側から見ると、やむにやまれぬ事情がある。しかし、ほかのドライバーや通行人から見れば迷惑以外のなにものでもない。大きなトラックが停まっていれば見通しが悪くなるうえに、車線変更をしなければならなくなる。いずれも、スムースな通行の妨げになって事故や渋滞の原因になってしまうのだ。
冷凍・冷蔵車などで装置を稼働させるためにエンジンをかけて停めていれば、騒音や排気ガスが出る。また、トラックは気軽に商業施設の客用駐車場には入れないため、公衆トイレなどがなければ、つい道端で用を足したり排尿したペットボトルを置き去りにしたりするといった、不心得なドライバーが出てきかねない。
駐車違反取り締まりは警察の職務だが、現在は外部委託が多いため、巡回ルートでなければ取り締まりの目が届かないこともある。地域住民からの苦情や訴え、トラックの駐車が原因で事故が発生するようなことがあれば、一定期間重点取り締まりの対象になるようだ。
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トラックの待機・休息のための違法駐車問題は、一朝一夕で解決することではない。荷主や物流倉庫運営会社は、これまでの意識を変えてトラックの待機場所の確保や、着荷・出荷時間の最適化を図ることが求められている。また、道路管理者である行政は、ドライバーの休息が可能なトラックステーションを早急に整備していく必要があるだろう。同時に、ドライバーもコンプライアンスを意識して業務にあたることが大切なのではないだろうか。