厳密な線引きが困難なカテゴリーも
主観的といえば、カテゴリーわけにおいて「スポーツ」という言葉の幅広さは、一般ユーザーの理解を難しくしている面があると感じないだろうか。
たとえば「スポーツカー」に分類するにあたり「スポーツドライビングを楽しめるクルマ」という基準で考えれば、ハッチバックボディのハイパワー4WDも立派なスポーツカーになるが、一方で「流麗なクーペボディでなければスポーツカーとは認められない」と主張するユーザーもいるだろう。どんなに高性能でもハッチバックボディであれば「ホットハッチ」と呼ぶべきだという主張もあるかもしれない。
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そもそも「クーペ」というボディ形状にしても、かつては2ドアであることが必須という印象もあったが、明らかに変化している。昨今は4ドアクーペも珍しくないし、クーペSUVといったハイブリッド的ジャンルも存在している。全高が低めであればクーペと呼ぶ時代に変化しているといえる。
大枠ではスポーツカーに分類されるが、超高価で販売台数が限られるモデルになると「スーパースポーツ」と呼ばれることもあるし、ガチガチに走行性能を突き詰めていないモデルについては「スペシャルティカー」と細分化されることもある。
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無責任に聞こえるかもしれないが、それぞれの自動車ファンが好きに分類すればよく、厳密性を求めるべきでないのが自動車のカテゴライズといえるのかもしれない。
それはともかく、個人的には「SUV」という名称には常に若干の違和感を覚えている。一般論としてSUVは「Sport Utility Vehicle」の略称であるが、いわゆるSUVモデルのどこにスポーツ性があるのか理解しがたい点もある。
たしかに、最近ではハイパワーなSUVもあるが、ハイパフォーマンスはSUVの条件ではないだろう。ローパワーであってもSUVにジャンルわけされるモデルは数多い。
SUVというカテゴリーが生まれたのは、こちらもアメリカ市場といわれている。SUVという言葉を最初に使ったのは「ジープ・チェロキー」というのが定説だ。機能性を重視したユーティリティビークルでは商用車的に聞こえてしまう。そこでスポーツという言葉を先頭に加えることで、アクティブなイメージを強調したのだろう。
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日本でも1990年代までは、現在のSUVにあたるモデルに対して、RV(レジャービークル)やクロスカントリー4WDといったカテゴリーで分類していたが、あるころからSUVというカテゴリーが主流になっていった印象がある。
そして、SUVという言葉が当たり前に使われるようになった時代を振り返ると、クロスカントリー4WDのような走破性をもつモデルがSUVであり、乗用車のアーキテクチャーを利用したモデルは「クロスオーバーSUV」という風に細分化されていたと記憶している。辛口に表現すると、本格派がSUVであり、それっぽく見えるクルマはクロスオーバーSUVという分類がされていた。しかし、いまやFFであっても普通にSUVとカテゴリーわけするようになった。
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いまでもランドクルーザーシリーズに代表されるよう走破性にこだわった本格派のSUVは存在しているが、多くのモデルが乗用車ベースとなったことで、あえてクロスオーバーとことわりを入れる必要がなくなったのかもしれない。
このように、自動車のカテゴリーわけというのはいいだしっぺの主観だけでなく、時代によっても変わってくる。だからこそ完璧なルールを作ることが難しいのだろうし、そうした概念の変化を楽しみ、トレンドの移り変わりを感じるのも、自動車趣味といえそうだ。