この記事をまとめると
■車種ごとのカテゴリー区分は厳密な定義よりも時代や提唱者の主観に左右されてきた
■たとえばミニバンやSUVという名称はもともとアメリカで生まれ日本で独自に定着した
■カテゴリーの意味は変化し続けその曖昧さ自体がクルマ文化の面白さでもある
ミニバンもSUVも曖昧な存在
自動車のカテゴリーというのは非常に複雑で、さまざまな分類が存在する。そして、そのカテゴライズは個人の判断による影響も大きく、完全なルールがあるとはいえないし、すべての自動車ファンのコンセンサスが取れているとも思えない。
結論からいえば、自動車のカテゴリーわけは、いいだしっぺの主観による影響が大きいともいえる。たとえば「ミニバン」というカテゴリーが誕生した背景を知れば、いいだしっぺの主観ということが理解できる。
いまや日本での自動車マーケットにおいてはメインストリームといえるミニバン。その条件は、スライドドアと3列シートといったもの。ボディサイズの小さいシエンタ、フリードから、ノア/ヴォクシー、セレナ、ステップワゴンと少し大きなサイズのモデルもあり、さらに「ミニ」とはいい難いほど大きなアルファード/ヴェルファイアまで多くのミニバンが存在している。
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ミニバンよりも小さな、2列シートしかないルーミーやソリオのことを日本では「プチバン」と呼んだりすることもある。その対義語として考えればアルヴェルは「デカバン」と呼ぶのがふさわしいと筆者は感じていたりする。しかし、ミニバンというカテゴリーの誕生を知れば、なぜ「ミニ」なのか理解できる。
よく知られているように、ミニバンというカテゴリーが生まれたのは1980年代のアメリカ市場。それ以前よりアメリカにはスライドドアの多人数乗車モデルがあったが、それらはボディが大きく「フルサイズバン」と分類されていた。
一定の年代にしか伝わらないかもしれないが、アメリカのアクション&コメディドラマ『特攻野郎Aチーム』の面々が劇中で乗っていた黒いボディに赤いラインの入ったクルマ(GMCバンデューラ)は、典型的なフルサイズバンといえる。この手のモデルは、トラック用のタフなパワートレインを流用していることが多かった。
GMCバンデューラのフロントスタイリング画像はこちら
そして、1980年代にアメリカではダッジ・キャラバンのような乗用車ベースのスライドドア車が生まれる。こうしたモデルをフルサイズバンと区別するために生み出された新カテゴリーがミニバンである。あくまでアメリカ基準で「ミニ」ということであって、アメリカ的な主観による分類法を日本が取り入れたため、日本では大きく見えてもミニバンとするのが正解といえるのだ。