米国都市部ではHEVの存在感が増す可能性
トランプ大統領が燃費規制撤回を表明したときには、ホワイトハウス執務室にアメリカンブランド関係者などを大勢集めたということからも、消費者目線というよりも業界目線のほうが動きとしては色濃いように見えている。
トランプ政権ではおそらくBEVやHEV(ハイブリッド車)などが純粋なエンジン車より価格が割高になることに注視しているのだろうが、技術開発に投資するコストが減ることで、車両価格セーブにも貢献できるとしているのだが、少なくともアメリカの都市在住者が主にはなってしまうが、燃費がよくガソリン代がセーブできるHEVの魅力に気がついてしまった事実は否定できない。
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ニューヨーク市などごく一部の大都市を除けば、日常生活の移動手段はマイカーにほぼ限定されてしまうのがアメリカ。最近はとくに治安悪化が叫ばれているので公共輸送機関の利用を手控える動きも出ていると聞いている。そのような状況下であっても日本のようにサラリーマンだからといって通勤交通費が会社から支給されることもまずない。
つまり、ガソリン価格の上昇は家計を直撃してしまうのである。平均的な日本人ドライバーに比べれば、全米平均であってもはるかに走行距離の多いアメリカではHEVを運転するメリットは高く、過去数年のガソリン価格高騰傾向により、多くの消費者が「HEVは購入時は少々割高だが、その後のガソリン消費量でもとがとれる」と考えるようになった。
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カリフォルニア州の突出した割高なガソリン価格は前述したとおりだが、全米レベルでのガソリン価格高騰が沈静化しているとはいえ、HEVへの注目はますます先鋭化しているといっていいだろう。日本車はHEVで強みを見せているが、それはモーターとの制御技術だけではなく、燃費や燃焼効率など優れたエンジンを作ることができることも重要となっている。
アメリカンブランドに搭載されているエンジンはお世辞にも効率がいいとはいえないし、燃費がいいともいえない。燃費達成基準を大幅に引き下げることにより、エンジンなどの開発費をセーブして車両価格を安くすれば日本車にも十分対抗できるだろうという皮算用もあるだろうが、ガソリン消費量が抑えられるHEVの魅力にアメリカは気づいてきているのである。
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トランプ政権の間は、BEVが急速にアメリカで普及するということはまずないだろう。となれば、アメリカンブランド車の目の上のコブは優秀な日系HEVとなる。世界情勢の変化などでふたたびガソリン価格高騰が顕在化すれば、全米レベルで日系HEVへ目立って流れるという動きも顕在化していくことになるだろう。
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ここのところ、アメリカ車でもV8エンジン搭載車の減少が目立ってきていることは、ひとりのアメリカ車好きとしては寂しい限りなのだが、燃費基準を引き下げてまで延命というのも少々話が違うようにも思える。
アメリカンブランドもHEVのラインアップを進めているようなのだが、日系HEVは燃費性能が格段にいいことが口コミ的に消費者の間で広がってしまってからの燃費規制緩和は、少々「TOO LATE」だったのかもしれない。