ディーゼル技術の成熟と商品力のバランスが評価をわける
実際に走り出すと、ディーゼルターボエンジン特有のトルクフルな走りで、7速DSG(ツインクラッチトランスミッション)の制御もスムースで適切な変速タイミングも小気味よく、熟成が進んだ完成度の高い走りを体感できる。
電動化が進んでいるライバル勢に比して、マイルドハイブリッドも導入していない「素」のディーゼルモデルでありながら、スムースでトルクフルな走りを実現しているのは流石と唸らせられる部分である。
ただ、市街地の信号で停止すると作動するアイドルストップからのエンジン再稼働はセルモーターで行われ、その際の振動やノイズは現代の最新水準からすると、いささか時代遅れではある。また、室内へのエンジン音侵入は低く抑えられているものの、車外でのエンジン音も現代水準としてはやや大きく感じられてしまう。
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走行フィール面では4MOTIONならではの安定性、直進性のよさが際立っている。ステアリングを補舵する力は小さく済み、疲労軽減に有効だ。轍やアンジュレーションなどの路面からの外乱や横風にも強い。
一方で、乗り味はやや硬質で、垂直方向の路面入力では角が立って伝わる場面があり、プラットフォームの設計世代を意識させられる部分もある。SUVとしての車高を基準に設計したというより、ゴルフの車高から嵩上げしたような、やや無理を通した乗り味が、高さとして感じられてしまうのだ。
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それでも、ボディサイズと室内空間のバランス、ラゲッジ容量を含めたパッケージングの完成度は高く、日常使いから長距離移動までの使い勝手は優秀である。もう少し柔らかなサスペンションストロークが可能なら、印象は断然向上するだろう。
試乗中の燃費性能は実用域でおおむね17km/L前後。ティグアン TDI 4MOTIONのWLTCモード燃費は15.1km/Lとされている。数年前なら優秀な燃費と評価されただろうが、近年はマツダCX-60やCX-80がより大きな排気量でありながら20km/L台の実用燃費を引き出せており、いささか物足りなさを感じてしまった。
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問題は価格設定にある。試乗モデルの上位グレードでは600万円を超え、同価格帯には新世代の電動化モデルやプレミアムSUVも視野に入る。かつてVWが誇った「合理的な高性能」というイメージからすると割高感は否めない。また、同社のゴルフ8 Rが世界最高水準のハンドリング性能を示していることを考えると、ティグアンにももう一段階の動的洗練がほしいところだ。
ティグアンTDI 4MOTIONは、ディーゼル技術そのものの完成度は極めて高い。一方で、商品全体としての鮮度や価格競争力をどう評価するかが、選択のわかれ目となるモデルである。
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