この記事をまとめると
■メルセデスベンツは「種からクルマを育てる」というアイデアを考案していた
■2010年のロサンゼルス・モーターショーで「バイオーム」として発表された
■土から育ち使用後は土に還るという仕組みが考案されていた
土で育ち土に還るクルマ!?
「種からクルマを育てる」というメルセデスベンツの突飛なコンセプトを聞いて、ジャックと豆の木みたいなファンタジーを思い描いた方は少なくないかと。あるいはシュツットガルト郊外の畑、スリーポインテッドスターの作業着で種まく人々をイメージすると、それはそれでエコっぽい(笑)ですが、夢やファンタジーでなく、メルセデスベンツは植物のように種から成長するクルマを提案して見せたのです。
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2010年のロサンゼルス・モーターショーで、恒例の「デザインチャレンジ」というイベントが「450kgのクルマ」というテーマで開催されたときのこと。チャレンジには、メルセデス・ベンツを筆頭に、GMやホンダ、ヒュンダイ、マツダなど9社が参加したといいます。そもそも、450kgという車重からして非現実的ですが、それゆえ「ジャックと豆の木」的な発想が求められたのではないでしょうか。
ここに、メルセデスベンツが提案したのが「バイオーム」というコンセプトカー。これは、「自然との共生」をテーマに、工業的な「製造」ではなく、「種から育てる」という架空の未来技術を想定してデザインされたクルマ。平たくいえば、4次元ポケットから出てくる便利な道具とさして変わらない想像の産物。とはいえ、その設定はさすがメルセデス・ベンツといえるもので、ロサンゼルスの意識高い系な人々は大いに感心したとのこと。
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たとえば、ボディとシャシーを構成する「バイオファイバー」は、独自のDNAからラボで成長させる植物由来の超軽量素材とされています。プラスチックや金属よりも軽く、鋼鉄以上の強度をもつ上、役目を終えた車両は、完全に堆肥化して土に還すか、建築資材として再利用できるという素晴らしさ。しかも、車体は「苗床」に蒔かれたふたつの種(内装用と外装用)から成長し、ホイールもまた別々の種から育つという設定。いったい、どこの惑星の話かってくらいのSFストーリーになっているのです。
さらに、バイオネクター4534(BioNectar4534)と名付けられた燃料は、太陽エネルギーを化学結合として蓄えた特殊な液体で、走行中には純粋な酸素のみを排出という願ったりかなったりなもの。そこへもってきて、車重は394kgを構想しているとのことですから、抜群の燃費を記録すること間違いありません。陽射しに恵まれたロサンゼルスなら、いくらでも走れそうな気がします。
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バイオーム・コンセプトを作り上げたカリフォルニアのデザインセンターでチーフを務めるヒューバート・リー氏は「自動車を発明したものとして、私たちは自然と完全に共生する、未来におけるパーフェクトなクルマを描きたかった。バイオームは、自然界のエコシステムの一部として木の葉のように成長する」とコメント。なるほど、メルセデスベンツでなければ口にできないプライドと責任がにじむもの。
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無論、コンセプトカーゆえにモックアップのデザインスタディとしての出品ですが、やはり実現を期待せずにはいられません。種から成長するだけに、4人乗りのはずが成長しすぎてミニバンまで育ったとか、マイバッハになると「完全無農薬」とか、パンクの原因は「白アリ」だったとか、なかなかファンタジックな未来が描けそうです。