社内の人間関係とかの面倒もないし稼げるし気楽な職業……なんてとんでもない! 確かに年収1千万円も夢じゃないが世間のイメージとかけ離れているタクシードライバーという仕事 (2/2ページ)

タクシーは思っているほどラクな仕事ではない

 法律では、「20時間近い乗務のあとは次の乗務まで22時間以上の休息を与える」と定められている。これは安全運行のための備えであって、日祝祭日のような休暇とは性質が異なる。現実には明け番に副業をする者もおり、その時間をどう使うかは個人の自由だが、だからといって休みが多いとするのは誤解を招きやすい。

 正確には、隔日勤務と明け番のセットの合間に、公休日という正式な休みが月に4〜6日設定される。タクシー運転手は休日が多いのではなく、一度に集中して働くぶん、仕事のあとに自由に使える時間がまとまって取れるという表現が適切だろう。

 デジタルツールの普及で稼ぎやすくなり、自由な時間が確保できる。ここまでは若者にとっても魅力的に映るが、報道では煩わしい人間関係がないこともメリットとして紹介されていた。

 確かに、一度車庫を出ればひとりの時間だ。しかし、タクシー業界は労働集約型産業であり、車庫に戻れば多くの同僚がいる。その様子はまるで学校のクラスのようであり、一般企業よりも人間関係が複雑だという見方もある。

 人間関係を完全に無視することも不可能ではないが、隔日勤務では1台の車両を2人の運転手で共有することが多い。そうなれば相方との関係構築は不可欠だ。洗車が雑であればクレームが来るし、大規模な営業所では派閥のようなものも生まれる。

 また、常連客を仲間に紹介しあうといった協力体制が必要な場面もあり、同僚との付き合いを完全に断つのは難しい。個人タクシーであればさらに人間関係が重視される。組合への加盟や、運転手同士のグループで上得意客を融通し合うといった慣習も珍しくない。

 筆者の私見ではあるが、客売売である以上、タクシー運転手の人間関係に伴う精神的負担はサラリーマンよりも重い側面がある。その点は覚悟して入職すべきだろう。

 結論として、世間に浸透している、タクシー運転手は組織や人間関係に縛られない気楽で簡単な仕事だというイメージは、実態とはかけ離れている。そして、こうした世間の誤解こそが、長引く運転手不足を招く隠れた要因のひとつではないかと考えている。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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