この記事をまとめると
■路線バスの事故トップは車内転倒で高齢者の被害が多い
■ワンマン運転で乗客管理が困難となり運転手不足も深刻化
■AIカメラ+ECUで着席・滞留・急ブレーキ時に自動音声による注意喚起が注目される
車内での事故は対策が難しい
路線バスは二種免許をもつプロの運転手が運転しており高い安全性が確保されているが、事故が皆無というわけではない。確かに、毎日たくさんのバスが交通量の多い交差点や狭い道を走っており、どんなに注意をしていても他車や人との接触などといった事故が起きることは避けられないだろう。
ところが、トヨタグループの大手自動車部品メーカーである「東海理化電機製作所」が、乗り合いバスの交通事故を類型によって集計した結果、もっとも多かったのは人やほかの車両との接触事故ではなく、車内で発生する事故だったのである。次に多い追突事故と比較すると、件数にして約2.5倍という多さであった。
路線バスの車内事故件数は年間で246件(全国)であるが、これは乗客から被害届が出された件数である。実際は、この5倍程度の事故が発生しているといわれているのだ。とくに高齢者の場合、ちょっとした揺れでも転倒することがあり、骨折などといったけがにつながることがある。しかし、そういった事故が起きても多くはバス事業者が直接対処し、警察が介入することは少ないという。
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路線バスはワンマン運行であり、車内の安全管理も運転手が担うことになる。運転・料金収受・ダイヤ管理など、ただでさえやらなければならないことが多いなかで、運転席後方にいる乗客の状況をリアルタイムで把握するのは至難の技だ。運転手不足が深刻化してシニアや外国人の採用が増加していることもあり、早急になんらかの対策を打つ必要があるといわれている。
そういった声を受けて普及しつつあるのが「バス乗客安全システム」だ。これは、バスの車内に2~8台のカメラを設置して乗客の状況や車内の様子を把握し、そのデータをAI搭載の電子制御ユニット(ECU)に送り、分析・対処するという仕組みである。このECUには、
・乗客が立っているか座っているかを判断する機能
・どこに空席があるか検知する機能
・車両が走行しているか停車しているか判断する機能
・乗降ドアが開いているか閉じているか判断する機能
・急停車を感知する機能
・バス停の情報を判定する機能(開発中)
といった機能が備わっている。これらの機能で分析した情報を基にAIが判断し、
・空席の際、乗客に着席を促す
・前方や中央に乗客が滞留しているとき、後方に誘導する
・走行中、車内を移動している乗客に注意を促す
・急ブレーキをかける際、車内に注意を促す
・回送時などに乗客の置き去りがあった場合、警告を発する(開発中)
といった案内を、モニターやスピーカーを通じ、映像や音声で行うのである。さらに、運転席にもインジケーターで赤・黄・緑・白のランプを点灯させ、状況の緊急度を知らせることができるようになっている。これだけ機能が充実していれば、運転手の負担を軽くすることに貢献しそうだ。
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また、とくに危険が認められないときには、車内の安全確保に関する啓蒙動画を流すことができる。このようにして安全のための車内マナーを周知し、利用者の意識を変えていくわけだ。すでに、アバターなどを介して観光案内をするAIバスガイドが実験段階にあるが、車内の安全確保や運転業務補助といった業務を担うAI車掌の誕生も、遠い未来のことではないのかもしれない。