F40ならいくらでも欲しい人がいる
さらにF40は、現代のスペチアーレとは異なるコンセプトで作られている。トランスミッションはもちろんMTだし、ABSもトラクションコントロールもなく、パワーステアリングすら装備していない。内装も簡素で快適性はほぼ皆無。いまやハイブリッド化や電子制御が当たり前となったスーパーカーの世界において、こうした完全アナログな存在は極めて貴重だ。つまり、F40は「もう2度と作られることがないであろうフェラーリ」なのだ。
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また、スペチアーレとしては決して少なくない1311台が存在するにもかかわらず、価格が高騰し続けている理由は、希少性ではなく純粋に需要が多いことを意味している。F40は1980〜90年代のスーパーカーブームを象徴する存在であり、多くの人にとっても憧れだった。その存在に胸を躍らせた世代の一部が、実際に購入できる財力を手にし、思い出と資金力が重なった結果、価格が押し上げられているのだ。
加えて、オークション市場特有の事情もある。F40の価格は個体差によって大きく変動する。走行距離が極端に少ないもの、オリジナル状態を維持しているもの、著名なコレクションに属していた履歴があるもの、華麗なヒストリーをもっているものなどは、通常の相場を大きく上まわる金額で取引される傾向にある。17億円級という価格も、こうした極上個体によって生まれたものだ。
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そしてもうひとつ見逃せないのが、「投資対象」としての側面である。クラシックカー市場において、フェラーリは安定した価値を持つブランドであることはいまや常識。とくにF40は世界中に需要があるため流動性が高い。株式や不動産と同じように、価値が落ちにくい資産として見られているのだ。
つまりF40は、もはや単なるクルマではない。歴史的価値、工業製品としての純度、そして文化的アイコンとしての存在感、それらすべてが重なり合った特別な資産なのである。
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近年では、同じスペチアーレであるフェラーリF50やエンツォなどの評価も上昇しているが、それでもなおF40の人気は別格に感じる。理由はシンプルで、より印象的な「物語」が付加されているからである。だから、F40はいくらでも欲しい人がいる。それが、30年以上経ったいまでも、F40が億単位で取引される理由なのではないだろうか。