この記事をまとめると
■全国の市町村にはカントリーサインという標識が設置されている
■自由に設置できるわけではなく国の認可やデザインの審査もある
■維持管理などに費用が掛かることから撤去する自治体も増えている
カントリーサインとはなんぞや
市町村の境界を越える際にしばしば見かける、地元の名産や観光地が描かれた標識、通称「カントリーサイン」。 「あ、ここからはリンゴが有名なのか」「この街はサーフィン推しらしい」などと長距離ドライブの退屈を紛らわせ、旅の情緒をかき立ててくれる名脇役である。
だが、ふと疑問に思う瞬間もある。「この絶妙にゆるいイラストは、いったい誰が描いているのか?」「派手なものから地味なものまであるようだが、ルールはないのか?」と。知っているようで知らないカントリーサインの裏側について、深掘りしてみることにしよう。
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まず整理しておきたいのは、我々がカントリーサインと呼んでいるものの多くは、道路交通法で定められた「道路標識(案内標識)」の一種だということだ。標識番号101(市町村)や102-A(都府県)に分類されるもので、基本的には「ここから先はこの自治体である」と示す公的な掲示物である。かつては文字だけのシンプルなものが主流だったが、1980年代後半からは地域振興や「一村一品運動」の流れを汲み、イラスト入りのタイプが急速に普及した。
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そんなイラスト入りカントリーサインのデザインは誰が行っているかといえば、結論からいうと、デザインは「その標識を設置する道路の管理者」と「所在する自治体」の共同作業によって決まっている。
イラストの内容やモチーフを最終的に選ぶのはその市町村(役場の観光課や広報課など)だが、デザイン自体は、地元の小中学生や一般市民からデザインを公募するケースと、地域のデザイナーや有名漫画家などに依頼するケースがあり、その街の「市町村旗」や「シンボルマーク」がそのまま流用されるケースもある。
そして自治体が「これで行きたい」と決めても、勝手にカントリーサインを建てることはできない。 国土交通省地方整備局や各都道府県の土木部・道路管理課など、道路管理者の承認と審査を経て初めて、「標識」として設置されることになるわけだ。
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さらにカントリーサインには、ドライバーの安全を守るため「視認性」という絶対条件も存在する。国土交通省の「標準案内標識設置基準」や各地方整備局のガイドラインにより、細かなルールが定められていることが多いのだ。
まずは「基本は5色以内」というルールが、多くの自治体や整備局でガイドライン化されている。5色以内が基本となる理由は、あまりに多色で複雑な絵にしてしまうと、時速60km以上で走るドライバーが瞬時に内容を理解できず、脇見運転の原因にもなってしまうなるから。そして基本色としては白、黒、青、赤、緑、黄、茶などが推奨され、遠くからでも輪郭がはっきり見えるようにグラデーションは禁止で、ベタ塗りが基本となっている。
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そんなカントリーサインの「聖地」といえるのは北海道だろう。北海道は1990年代、道内の全市町村でイラスト入りのカントリーサインを統一的に整備。これには、広大な北海道において現在地を直感的に把握させるという実用的な目的があった。すべての市町村に固有のイラストがあるというのは、全国でも北海道だけかもしれない。
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その一方で東京都心部や、歴史的景観を重視する京都府の一部など、景観への配慮やコスト面から、あえてイラストを入れない「文字のみ」の硬派なスタイルを維持している場所も少なくない。個人的にはイラストを入れたほうが楽しげでいいじゃないかと思うのだが、このあたりはまあ土地柄というかなんというかで、致し方ない話なのだろう。
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そして近年はカントリーサイン界にも少々の変化が起きている。看板1枚の製作・設置には数十万円のコストがかかるとされており、予算の厳しい自治体では、老朽化したカントリーサインを更新せず、撤去のみを行うケースも増えているのだ。ニッポンが置かれた現状から考えると、イラスト入りの素敵なカントリーサインは今後、もしかしたら「贅沢品」に近いものになっていくのかもしれない。