見える物理ロックによる犯人への心理的抑止効果
なぜハンドルロックだったのか。K・TECTが提唱する防犯の極意は「ロックのキモは見えていること」だという。目に見える防犯対策は窃盗側への”心理的抑止”として機能し、時間がかかる対象は回避されやすい。プロの窃盗団は犯行前に必ず下見を行うため、外からひと目で「このクルマは強固なロックが装着されている」と認識させることが、最大の防御となる。
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「盗難されるクルマは、車種よりも”対策しているかどうか”で狙われやすさが変わります。高級車でも物理ロックが装着されていれば、犯人はリスクが高いと判断して避ける。逆に普通のクルマでも無対策なら狙われる。K・TECTとしては”盗難されにくい車両環境を作る”という発想が大切だと考えています」
もちろん、見えるだけでは不十分だ。窃盗側はロックの破壊や切断を試みるため、場合によってはハンドル自体を切断するケースもある。そこで「ハンドルの切断を成立させない構造」を考案。無理に動かせばホーンが鳴り、ハンドルを切断させない。ロック本体を外させないガード構造や、サンダーの刃が入りにくい形状を採用した。さらにフィンランドの高セキュリティ錠前ブランド「ABLOY」製キーシリンダーを採用し、テロ対策レベルのピッキング耐性も備えている。
それでも「世の中に100%完璧な防犯はない。時間をかければ、どんなロックもいつかは突破される」と言う。だからこそ重要なのは、”突破するのに時間がかかる”と思わせる心理的抑止だ。ひとつの対策を破られれば終わってしまう。だからこそ多重化が鍵となる。
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「割に合わない」と犯人に思わせるのが大事
「犯人が一番嫌うのは時間と目立つことです。暗い、人目がない、カメラがない、対策が見えない、この条件が揃った車両から順番に狙われます。逆に言えば、ハンドルロックが車内から見えているだけで、計算が狂います。”あのクルマは時間がかかる、やめておこう”と判断させることが、そのまま防犯になる。完璧な防御より、割に合わないクルマと思わせることのほうが現実的に効果が高いです」
その点でハンドルロックのよさは、装着しているだけで防犯メッセージになること。セキュリティアラームは鳴って初めて機能するが、ハンドルロックは存在そのものが抑止力になる。しかも視覚的に”やっている感”が出るので、習慣化もしやすい。”今日くらいはいいか”という一瞬の油断が一番危ないので、そこを防ぐ意味でも有効だ。
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「ですが、正直に言いますと、時間と道具をかければ、どんなロックも突破することができます。それは否定しません。でも、だから意味がないとはまったく思っていません。犯人が嫌がるのは、作業時間、作業音、人目、発覚リスクです。物理ロックはそのすべてを引き上げる。”このロックは切れない”ではなく、”このクルマは面倒だ、次にしよう”と思わせることが目的です。K・TECTのロックが強度と同じくらい見た目の威圧感にこだわっているのはそのためで、見た瞬間に諦めさせるというのは設計上の本気の狙いです。100%は無理でも、そのクルマを諦めさせれば守れたことになる。防犯はそういう積み重ねだと思っています」
社会全体での取り組みが必要
最後に、防犯対策の商品を開発している立場からメッセージをもらった。
「盗まれてから後悔する文化を変えたい、というのが正直な気持ちです。メーカーとして私たちにできるのは、使いやすくて続けやすいアイテムを作り続けること。ユーザーには防犯を面倒なことではなく、愛車を持つ当たり前の習慣として根付かせてほしい。ただ、個人や企業の努力だけでは限界があるとも感じています。ひとつ率直に言わせてもらうと、盗難で捕まった際の罪が軽すぎるという問題があります。リスクが低ければ犯罪の抑止力になりません」
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「被害を受けたオーナーの損失や精神的なダメージを考えると、社会全体での盗難抑止に向けた取り組みが、より一層強化されることを願っています。駐車場の環境整備や地域コミュニティでの情報共有とともに、行政・企業・ユーザーが連携して取り組むべき問題だと感じています。K・TECTとしては、ロックを売るだけでなく、防犯文化の醸成に貢献できるメーカーでありたいと思っています」
※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております