BYDならではの新しい提案に期待したい
では、一充電320kmという航続距離をどう見るか。当然ながらWLTCモード320kmという数字が、あらゆる条件でそのまま得られるわけではない。高速道路、冬季、エアコン使用、登坂路、運転方法によって航続距離は変化する。これまで多くのBEVを走らせた経験からすれば、充電ポイントまでの余裕を含め、安心して使える距離としては公表値の3分の2程度をひとつの目安として考えておきたい。
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自身が所有する2017年式N-BOXカスタム・ターボなら、満タンで400km前後走れる。ラッコも実用上、それに近い行動範囲を確保できる可能性はある。ただしEVの場合、問題になるのは航続距離だけではない。「どこで充電するか」が重要だ。軽自動車は毎日の生活の足として使われるケースが多い。そう考えれば、自宅に普通充電設備を用意できる環境との相性がもっともいい。
しかし、都市部の集合住宅では自宅充電が難しいケースがまだ少なくない。一方、戸建て住宅が多く自宅充電設備を設けやすい地域では、今度は4WD需要が問題となる。とくに降雪地域では軽スーパーハイトの4WD需要は高いが、ラッコは現状FWDのみだ。日本全国で既存のガソリン軽と同じように普及することを考えるなら、4WDの設定は避けて通れない課題となるだろう。
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BYDのモーターユニットは非常にコンパクトなので、将来的に後輪側へ小型モーターを追加する可能性には期待したくなる。N-BOXは4WD化しても基本的な室内ユーティリティをほぼ犠牲にしていない。そんな“魔法”のようなパッケージングまでラッコが実現できるのか、ぜひ見てみたい。
軽EVとして見れば、ラッコはよくできている。EVならではの静かでトルクフルな走り、低重心による操縦安定性、そして国産軽にはない装備。ただし、初めて軽自動車を作った海外メーカーだからこそ期待した「国産車にはない新しい使い勝手」や、BYDならの独自性はそれほど強く感じられなかった。
細かな振動の処理、後席の乗り心地、タイヤを含めたシャシーチューニングには、日本メーカーが長年積み重ねてきたノウハウとの差が残されている。
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そしてもうひとつ重要なのがアフターサービスだ。軽自動車は単なる趣味の商品ではなく、日本全国で日々使われる生活インフラに近い。経年変化も含めて壊れにくいこと。そして万一トラブルが起きたときに、どれだけ迅速に対応できる販売・サービス体制を構築できるのか。そこまで含めてラッコの商品力は評価されることになる。
N-BOXをはじめとする日本のスーパーハイト軽を徹底的に研究し、ときには大胆なほど模倣し、そこへBYDが世界で蓄積してきたEV技術を組み合わせたラッコ。BYDはもともとバッテリーメーカーとして成長し、BYD担当者によれば現在はトヨタやスズキにもBEV用バッテリーを供給しているという。
それならば、まずX-PACKのような高度に統合されたEVシステムをサプライヤーとして国産軽メーカーへ展開し、日本の軽EV市場そのものを育てたうえで、次の段階としてBYD独自の発想を盛り込んだラッコを送り込むという戦略もあったのではないか。完成度は高い。だが、あまりに日本の成功例を忠実になぞっていたがため、最後に残ったのは「BYDにしか作れない軽自動車も見てみたい」という思いだった。
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