この記事をまとめると
■BYDラッコの市販モデルに中谷明彦氏が試乗
■全体的に完成度は高いが走行性能や品質面で課題も残る
■BYDならではの要素を盛り込んだ独自性の高いモデルも期待したい
ジャパンモビリティショー2025でプロトタイプが発表され、発表前から注目を集めた軽BEVであるBYDラッコ。ついに発売された市販モデルに、自動車性能評価の匠・中谷明彦が最速試乗!!
【前編はこちらから】
「ニッポンの軽」を徹底的に研究してきたが課題も多い
一方で、走らせるほどシャシー側の課題も見えてきた。とくに気になったのはリヤサスペンションから伝わる細かな路面入力だ。大きな段差を越えたときの衝撃はそれほど悪くない。ところが舗装の荒れた路面や細かな凹凸が続く場所では、前後タイヤから入った微振動が車体へ伝わりやすい。段差を越えたあとにはリヤアクスル周辺が細かく震え、その振動が一度で収束せず、シートやボディへ伝播してくる感覚がある。
後席ではその傾向がよりわかりやすく、リヤシートそのものが細かく揺すられるような感触もある。絶対的なシャシー剛性が足りないというより、ボディ剛性の前後バランスやサスペンション取り付け部、ブッシュ、ダンパー、タイヤを含めた振動減衰のチューニングに、もう一段の磨き込みが必要なのだろう。
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リヤサスペンションまわりを確認すると、N-BOXのように外観から明確に確認できるバンプストッップラパーは見当たらず、リヤのトーションビーム構成も比較的シンプルに見える。そのねじり剛性を含めたロール剛性配分や、入力後の振動収束特性が今回感じたリヤの乗り味にどのように影響しているのか興味深いところだ。
また、タイヤの影響も無視できない。細かな凹凸を拾った際の振動特性を見ると、タイヤのユニフォミティーや減衰特性を詰めるだけでも改善できる可能性はありそうだ。パワートレインが静かなEVだからこそ、タイヤノイズや足まわりからの細かな振動が余計に目立つのである。
タイヤ銘柄は中国サイルンの「ツーリスモコンフォートCS21」画像はこちら
装備面ではBYDらしい攻め方も目立つ。300Premiumの運転席は6Way電動調整式。前後スライド、リクライニングに加えてシート高も電動で調整できる。これは国産軽自動車では見られない高級装備で、体格に合ったドライビングポジションを作りやすい。
ダッシュボード中央には10.1インチのタッチスクリーンを装備し、Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応する。さらにタイヤ空気圧表示、ADAS関連表示、フロントシートヒーター、リヤドアサンシェードなど装備は充実している。
センターコンソールの10.1インチタッチスクリーン画像はこちら
後席のシートアレンジや室内の使い勝手を見ると、N-BOXを徹底的に研究していることは明白だ。左右独立の前後スライド、座面跳ね上げ式の分割可倒、後席まわりの構成まで、ここまでくると少なくともパッケージング思想については「研究」という表現を越え、コピーに近いと感じる。
BYD担当者によれば、実際にN-BOX用のフロアマットや後席用パーツの多くがそのまま装着可能だという。ただし、シート固定部やスライド機構を動かしたときの質感まで同じではない。ドアまわりのウェザーストリップなど、日本の軽自動車が長年磨き込んできた部分までよく模している一方、動作時の節度感や振動の収束といった「感応品質」には差が感じられる。
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極めて短期間で開発されたラッコだが、お手本を再現して商品として成立させる技術力は高い。しかし、長年の積み重ねによって得られる動作質感や感応性能まで獲得するには、まだ高いハードルが残っている。これは今後、日本のユーザーから学ぶことになるだろう。