バッテリーを減して航続距離を稼ぐ! 310kmを走行できるスズキの軽EV「eスカイ」が打ち破ったEVの常識 (2/2ページ)

「バッテリーリーン」で実現したこれまでにない省電費

 EVといえば、駆動バッテリーのぶんだけエンジン車より重くなりがちだが、eスカイのプロトタイプの重量は1030kgと、軽乗用EVのなかでは最軽量の部類。この軽さにつながっているのはバッテリー搭載量を控えめとしたことだろう。

 そう、eスカイのバッテリー総電力量は26kWhにとどまっている。軽EVの知識があれば、ホンダN-ONE e:の29.6kWh、BYDラッコの上級グレードが35.84kWhに対してe SKYのバッテリーは小さめであり、「一充電走行距離の短さにつながっているのでは?」と思うかもしれない。

 しかし、eスカイの一充電走行距離は310kmになるとアナウンスされている。N-ONE e:が295km、ラッコが320kmのカタログスペックであることを考えると、eスカイは総電力量に対して航続距離が長い。いい換えると、圧倒的に効率に優れていることがわかる。

 実際、プロトタイプの数値としては交流電力量消費率は97Wh/km。この数字は小さいほど電費が優秀といえるが、量産車で2桁の数値を実現したモデルは記憶にない。

 これほど優秀な電費を実現する技術的なアプローチが「バッテリーリーン」だ。EVの航続距離を稼ぐには、バッテリー搭載量を増やせばいいのだが、そうなると車重が増えてしまう。重いボディは電費の悪化につながるため、さらにバッテリーを積んで航続距離を稼ぐというジレンマに陥ってしまう。

「バッテリーの罠(バッテリー・トラップ )」と呼ばれるジレンマを解消するのが、スズキがeスカイに採用した「バッテリー搭載量を全体バランスから最適化する」という「バッテリーリーン」という考え方だ。とはいえ、単にバッテリー搭載量を最小限にするだけでは従来の軽自動車から乗り換えたユーザーにとって、航続距離という重要な使い勝手において我慢を強いることになる。

 そこでeスカイでは、まったく新しいスタイリングやフラットフロアの採用などによる軽自動車トップを狙った空力性能と、3 in 1のeアクスルなどによる軽量化技術によって、少ない電気でたくさん走る性能を実現した。それが310kmという一充電走行距離につながった。

 バッテリー総電力量が小さいということは充電時間の短縮にもつながる。軽EVでは、ローコストな普通充電を基礎充電として使うケースが多いだろうが、eスカイでは充電警告灯の点灯から100%充電まで、3kW普通充電で約8時間、6kW普通充電であれば約4.5時間だという。ちなみに急速充電は50kWまで対応するということだが、充電警告灯が点いてから80%充電までの所要時間は約25分というからかなり短い。

 26kWhのバッテリーは、軽量化に寄与するだけでなく、日常的な充電時間も短くて済む。これはユーザーの心配を軽減する要素といえるだろう。

 あとは、現時点では公表されていない価格が気になるところ。ご存じのように、EVの価格はバッテリーのコストに影響される部分が大きく、バッテリー搭載量が増えるほど価格は上昇しがちだ。

 はたして、安価で耐久性に優れたLFP(リン酸鉄)バッテリーを採用したeスカイの価格はいかほどになるのか。少なくともCEV補助金を考慮して、ハスラーのターボ車と同等レベルの価格(180万〜200万円)を実現したならば、eスカイを積極的に選ぶユーザーはかなり多くなりそうだ。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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