BMWの次世代デザイン「ノイエ・クラッセ」採用第一弾。新型iX3が絶賛のコンセプトカーから引き継いだものと妥協したもの

この記事をまとめると

■新型iX3はノイエクラッセの新デザイン言語を量産車で初採用した

■1960年代と80年代の名車を現代的に再解釈した造形が特徴

■ドア面とフェンダーの対比が弱まった点が気になる

新型iX3で見えた期待と不安

 7月22日に発表されたBMW iX3は、同ブランドが掲げる新世代のノイエ・クラッセ第一弾として注目されています。たしかに、フロントフェイスをはじめ、従来のモデルとは大きく異なる表現が目を引くスタイリングです。では、BMWが推進するこのノイエ・クラッセ、デザイン的に見るべき点はどこにあるのか、あらためてチェックしたいと思います。

 ノイエ・クラッセ(新しいクラス)とは、高級車と小型車の間を担う主力商品を欠き、経営危機にあったBMWが1960年代初頭に送り出した革新的モデル群の総称とされます。とくに1962年登場のBMW 1500は有名で、のちの名車を生み出すゲームチェンジャーともいわれています。

 それがいま再構築される本当の理由は不明ですが、2023年に発表されたビジョン・ノイエ・クラッセは、巨大グリルなど、少なくとも近年の迷走気味だったBMWデザインを一新するであろう魅力をもったものでした。

 ムダを徹底的に削ぎ落とし、モノシリックな面構成や最小限のキャラクターラインなど、モダンでタイムレスなデザインを謳う新デザイン言語はまさに革新的です。特徴的なグリルは1960年代を再解釈したとされますが、長いホイールベースに短いオーバーハング、ウエッジ気味のボディに乗る大きなキャビンなど、全体の佇まいは1980年代を想起させるもので、とくに前進姿勢のキャビン形状や腰高のリヤエンドなどは、ネオクラシックカーブームのいま、多くのユーザーに刺さったのではないでしょうか。翌年発表されたビジョン・ノイエ・クラッセXも、基本的には同じテーマで構成。シンプルなドア面と張り出した前後フェンダーの対比が特徴です。

 1960年代から1980年代までの名車の再解釈として、ほぼベストの解答を示したコンセプトカーですが、では量産化第一弾のiX3での反映具合はどうでしょうか? 結論からいうと、そこには若干の心配があります。具体的には、コンセプトカーの特徴であったドア面とフェンダーの対比が弱くなっている点です。これはコンセプトカーにはなかったショルダーラインが追加されたことが原因で、これとフェンダーが融合するサイド面は、従前のモデルとあまり違いが感じられないのです。

 もちろん、サイドウインドウと段差のないドア面をもつコンセプトカーには、そもそも機能面や安全面での要件まで想定したものではなかったともいえます。が、仮にショルダーの張りを設けるとしても、コンセプトカーの「味」を残すラインの引き方はあったように思えます。

 じつはこれ、3月にドイツ本国で発表されたi3 セダンにも同じことがいえるのです。BEVのi3が新しい3シリーズと同一デザインかは不明ですが、全体の佇まいこそコンセプトカーに近いものの、追加された柔らかいショルダーラインがiX3同様にモノシリックな面を消しているし、キャビン形状もより「普通」になっています。

 コンセプトカーはあくまで方向性を示すものですし、いきなりすべての要素を1台に投入するのではなく、順を追って特徴を打ち出して行くという手法もあるでしょう。ただ、コンセプトカーの完成度があまりに高かったので、その期待も相応に高いのが難儀なところです。まあ、BMWによれば、新しいデザイン言語は2027年末までに40車種で展開されるといいますから、ここは焦らず待つべきなのかもしれませんね。


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すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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