この記事をまとめると
■セダンは日本で長く乗用車の主役だった
■1990年代からミニバンやSUVが台頭し存在感が低下
■セダンならではの価値はあるが復権は厳しい
かつては憧れの象徴だったセダン
カーデザインの歴史を振り返ると、1930年ごろまでのクルマは、独立したトランクスペースを備えないミニバンやSUVに似たボディスタイルだった。ボディの後ろ側に小さな荷台を装着して、スーツケースなどを縛りつけた。
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ただしこの方法では、荷物が雨に濡れる。そこで荷台をボディの一部に取り込むデザインが生まれた。これがセダンだ。当時は流線形もトレンドで、ボディの前側に長いボンネットがあり、その後ろに背の高い居住空間が繋がり、ふたたび低いトランクスペースに至る流麗で美しいセダンがクルマの付加価値になった。
とくに日本ではこの3ボックスセダンの時代が長く続いた。日本で乗用車を中心にした自動車産業が本格的に立ち上がったのは、初代トヨタ・クラウンが発売された1955年ごろだ。そこから1990年ごろまでは、小型&普通乗用車ではセダンが主役だった。セダンは豪華でカッコよく、憧れのクルマにピッタリなボディ形状だった。
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1990年代に入ると、女性の運転免許保有者数が増えた。1970年の運転免許保有者全体に占める女性比率は18%だったが1995年には40%に達した。そうなればクルマの使われ方も変わる。ファミリーカーの場合、運転免許を取得した妻が買い物などにクルマを使うようになった。クルマを週末のドライブで主に夫が運転した時代は、デザインや走りが魅力的なセダンが好まれたが、妻が買い物に使うならコンパクトで荷物を積みやすいハッチバックが便利だ。ボディの後部に背の低い独立したトランクスペースを備えたセダンは運転しにくく空間効率も悪いため、主婦層のニーズに合わなかった。
しかも1990年代に入ると、日産セレナ、ホンダステップワゴンといった3列シートミニバンの初代モデルが各社から登場して、ファミリーユーザーの間で人気を高めた。ほぼ同時期に、5ナンバーサイズだった初代RAV4も若年層の間で大ヒットした。
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このようにセダンが古臭く感じられるようになったころにミニバンやSUVの新型車が続々と登場して、セダンは売れ行きを急速に落とし、車種の数も減り始めた。
そして冒頭で触れたように、1930年ごろまでのクルマは、すべてトランクスペースを備えないボディだった。つまりクルマのデザインは、外観を優先させたセダンの長い時代を経て、空間効率の優れた実用性へ回帰したのだ。もはやセダンが中心の時代に戻ることはない。
それでもセダンにはほかのカテゴリーでは得られないメリットがある。SUVやミニバンに比べて重心が低く、後席とトランクスペースの間に骨格が入るためにボディ剛性を高めやすいことだ。セダンはほかのカテゴリーに比べて走行安定性と乗り心地が優れている。
欧州にはアウトバーンがあり走行速度も高いため、今でもメルセデス・ベンツやBMWといったプレミアムブランドを中心にセダンが残る。それでも日本や北米ではSUVの人気もあってセダンが少数派になった。とくにコンパクトセダンは絶滅状態だ。全長が4500mm以下のボディで独立したトランクスペースを備えると、居住空間が狭くなる欠点が際立ってしまうからだ。
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そこで今の全長が4500mm以下の車種は、独立したトランクスペースがなく、天井の高いSUVにすることで、小さなボディでも4名が快適に乗車できるように工夫されている。走行安定性と乗り心地が優れたセダンの価値は今でも確実に残るが、そのニーズは大幅に弱まっている。