安全装備も快適装備も多勢に無勢の右利き優先
しかし、ハンドル位置や工業規格に関係なく、やはり左利きでは不便な、右利き中心の色合いが濃い設計も散見される。たとえばステアリングスイッチの配置だ。
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大路氏の愛車は、右側に安全装備など走行に直接関与するスイッチが集中し、左側はオーディオなど緊急度の低いものが主体だというが、これは多くのクルマに見られる傾向だ。
そのほかにも、右ハンドル車であれば、日本車も輸入車もヘッドライトスイッチは右にあるものがほとんど。シートの調整も、座面脇でもドアパネルでも右側になる。
いっぽう、左利きに有利そうなのはカーナビやディスプレイオーディオのセンター画面。右ハンドルなら位置は運転席左側になるので、タッチ式なら操作を利き手でできる。
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とはいえ、目的地検索や細かい設定などは停車中に行うことが多いし、音声入力などで代替できる場合もある。走行中のタッチ操作に利き手が問われるほど複雑なものはあまりないし、そんな要求をするようなデバイスは、そもそもの設計に問題があると言わざるを得ない。
昔ながらのエアコンやオーディオも、配置は同様だ。とはいえ、それらの操作系はスイッチやダイヤルを用いるのが主流で、走行中でもタッチパネル式以上に扱いやすい。同じことは、センターコンソールに設置される走行モードなどのスイッチ類にも言える。右利きであっても、難点とはならないはずだ。
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結局、運転中の操作の頻度や必要性が高いものは右側、さほど重要でないものや操作が簡単なもの、停車して操作すればいいものは左側、というレイアウトが一般的。右利き目線では見過ごしがちだが、ひとつひとつは些細な違和感でも、積もれば大きなストレスになることもあるのだ。
右と左がわからなくなる”左右盲”は左利きに多い
クルマの運転に関して、左利きに不利となりうる要因はクルマそのものだけではないと大路氏は語る。そのひとつが左右失認や左右盲と呼ばれるもの。左右の判断や指示が瞬時にはできない現象で、右利きより左利きに多いという。
その理由として、大路氏が挙げるのは幼少期に受けた指導だ。右は「お箸を持つほう」、左は「お茶碗を持つほう」といった、子どもにわかりやすいよう配慮しようとした表現が、左右の認識に混乱をもたらす、というわけだ。
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運転の際には、右左折の場面で迷ってしまう原因となりうる。心当たりがあれば、カーナビの指示を音声だけに頼らず、矢印表示も合わせて確認することを心がけたい。また、同乗者に道案内してもらう際には、進行方向を指差ししてもらうよう頼むのも解決策だ。
ちなみに、「左利きは寿命が短い」と言われることがあるが、これには自動車事故での致死率が関わっているという説があるのだとか。瞬間的な危険回避の際、左手での操作が右手に勝り、対向車などに激突する確率が高いという学説に基づくのだが、そう聞いて疑問に思ったあなたはスルドい。
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左へ操舵して、対向車線へ突っ込むというのだから、右側通行・左ハンドルの国のケースだということが推測できる。そう、これは北米での研究結果だ。しかも、実車を運転しての検証ではなく、急にボールを投げつけられた際にどちらの手が上にくるか、という実験のデータを当てはめたもの。その際、左利きは右手が上、右利きはその逆になる確率が高いので、ステアリング操作も同様だろう、という少々強引な話。これについては、あまりナーバスにならなくていいだろう。
利き手を選ばないユニバーサルデザイン
ただし、日本でも左利きの事故率が高いケースがある。ある民間保険会社のデータでは、後方確認が不十分な追い越しの際に後続車と衝突する事故と、緊急回避のための車線変更で並走車のドア部分に衝突する事故は、右利きの2倍に達したという。
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シフトチェンジを伴う操舵は右手で行うことが原因と推測されるので、AT車なら危険性は低くなりそうだが、十分な安全確認と両手ハンドルを心がけることも重要だ。
このように、右利きにはわからない、左利きならではの運転特性や悩みが確かにある。それを軽減しうるのが、文化や能力といった個人の違いを問わず多くの人が利用できることを目指すユニバーサルデザインだ。パドルシフトはこれに当てはまることは先に触れた。
たとえばウインカーは、最近のフェラーリのように左右のステアリングスポークにスイッチを配置するという方法が考えられる。テスラの場合はスイッチが左側にあるが、矢印を記しているので利き手に関係なく扱いやすいデザインと言えるだろう。左右どちらのレバーか迷わないだけでなく、左右失認の対策にもなる。
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ステアリングスイッチには、一部だけでも、使い手に合わせて設定できる機能を持たせたり、ディスプレイを操作できるタッチパッドを両側に設置することはできないだろうか。そうすれば、利き手を問わず使い勝手がいいはずだ。
調べるほどわかったのは、運転の技量や能力の差ではなく、大多数が当たり前と思っていることに、不便を感じている人がいるということ。100年に一度の変革期と言われる自動車業界、常識を疑い、今後誰もが使いやすいクルマが生まれることに期待したい。
※本記事は雑誌「CARトップ2025年4月号」の記事を再構成して掲載しています