爆速すぎる商用車が社会問題化ってマジ!? メルセデス・ベンツの「スプリンター」が世界各国で超絶人気だった

この記事をまとめると

■メルセデス・ベンツ スプリンターハイルーフや多彩なボディバリエーションをもつ商用バン

■高出力エンジンゆえにアウトバーンでの事故が多発し規制の対象ともなった

■現行モデルは安全装備やMBUXを備えて世界的なヒット商品へと成長している

あのメルセデス・ベンツの商用バン

 メルセデス・ベンツVクラスは質実剛健なミニバンとして、国内外で人気を誇るモデル。ですが、同じメルセデス・ベンツでも、商用車としてデビューしたスプリンター(W901-906)もまた、シンプルなインテリアやハイルーフなど、アウトドア・アクティビティに向いているとして根強い支持があるモデル。もっとも、ドイツ本国ではちょっとした社会問題まで引き起こしたといういわく付きモデルだったりするのです。

 スプリンターは、よくVクラスの姉妹車と思われがちですが、シャシーやエンジン構成はまったく違います。そもそも、先代のトランスポーターと呼ばれたモデルのアップグレード版であり、ホイールベースは3〜4.2mまで数種あり、リヤサスもリーフスプリング(Vクラスはストラット)を使ったガチな商用車という生い立ち。

 それゆえ、架装されるボディはハイルーフ(なかで人が立って移動できるもの)が標準的で、バスやトラックといったスタイルに加え、高所作業車など特殊用途向けボディなど、バリエーションは豊富すぎるほど。無論、エンジンもディーゼル、ガソリンともにラインアップしており、世代を追うごとにパワーアップをしています。

 一例をあげれば、2代目となるW906では3リッターV6直噴ディーゼルターボは154馬力、ガソリンエンジンは3.5リッターV6で254馬力とされており、たとえ荷室をいっぱいに使ったとしてもなかなかの俊足ぶりを発揮してくれそうなもの。

 ところが、この俊足(スプリンター)ぶりが裏目に出てしまい、当のメルセデス・ベンツが対応に苦慮したという場面もありました。というのも、ドイツでは乗用車登録が可能なデリバリーバン(総重量3.5トンまで)は、アウトバーンにおけるトラックに対する速度規制(80km/h)を免れることができることから、オーバースピードによる事故が多発した時期があるのです。

 日本のちょっ速プロボックスと同じく、ドイツでもスプリンターは「納期とクレーム」のツインターボなのか、誰もが眉をひそめるスピードで走っていたのだそう。ですが、スプリンターは比較的軽いボディで、モノリーフスプリング(板ばねが多層でなく、長い板が1枚)ということから、オーバーステアに陥りやすいとのこと。こうして、多数の事故からドイツ政府も規制せざるを得なくなったのだとか。

 ともあれ、この規制がきっかけで「安全性」に機敏なメルセデス・ベンツは、3代目スプリンター(W907/910)にアダプティブESP(横滑り防止装置)を標準装備するなど、より一層の商品力を備えた次第。また、次世代の通信やドライバーアシスト機能のために、車載インフォテインメントシステム「MBUX」も搭載するなど、商用車としては破格の扱いです(笑)。

 その甲斐あってか、スプリンターは意外なドル箱に成長しており、ドイツはもちろんアメリカやロシア、アルジェリアやヨルダンなんて国でも製造中。また、フォルクスワーゲンにコンポーネント提供とかやってますから、年間十数万台の売り上げは確かかと。残念ながら国内導入は現在のところ並行輸入のみとなっておりますが、これだけ世界中で売れてるなら国内への正規導入も再開されるかもしれませんね。


この記事の画像ギャラリー

石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

新着情報