この記事をまとめると
■AT車はエンストしないと思われているがそれは大きな間違いだ
■坂道などで本来の進行方向とは逆の方向にクルマが動いたときなどにエンストしやすい
■燃費を稼ぐ目的で「N」レンジで走行しても効果がないだけでなく負担をかけるだけだ
AT車でもエンストは起こる
クラッチのカットとミート、そして最適なギヤのセレクトをコンピュータ制御で行ってくれるのが、オートマチックトランスミッション=ATの最大の特徴だ。そのおかげで、AT車は基本的にエンストと無縁なのだが、ドライバーの操作に問題があると、ATでもエンストを起こすことがある。
その主な原因は、次のふたつのケース。
① 上り坂でDレンジのまま(アクセルを踏まずに)ブレーキを離して、クルマが後退してしまった場合
② 下り坂でRレンジのまま(アクセルを踏まずに)ブレーキを離して、前進してしまった場合。
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これらは、エンジン・ミッションの出力(回転)と車体の進行方向が反対になるので、エンストを起こしやすい。
これがただエンストを起こしただけなら、セレクターをPかNに戻して、エンジンを再スタートすればいいだけだが、上記のような操作をしてしまうと、ミッション内の回転方向と、タイヤの回転方向が逆になるため、ATのトルコンに大きな負担がかかってしまう。
ATの故障や寿命を縮めることにもつながりかねないので、こうした雑な操作、シフトミスは極力避けるように気をつけよう。また、クルマが止まり切る前(わずかでも前進し続けている状態)で、PレンジやRレンジに切り替えるのもAT本体に大きなストレスがかかり、故障の原因になるので絶対に避けること。
ATのPレンジ画像はこちら
もうひとつ、故障などで自走できない緊急時を除き、Nレンジでクルマを動かすのはタブー。ときどき燃費を稼ぐ意図から、下り坂などでNレンジに入れて惰性で走る人がいるようだが、いまのクルマはアクセルを全閉にした時点で燃料カットが働くのでまったく無意味。それどころか、ミッション内のオイル潤滑量がアイドリング時と同等となり、ATクーラーに流れるフルードの量もわずかになるので、油温がオーバーヒート気味になるだけ。ATを痛め、寿命を縮める行為以外の何物でもないので、百害あって一利なし。
さらに、赤信号で止まるたびにNレンジやPレンジに入れるのもよくない。Dレンジからセレクターを切り替えるたびに、クラッチが摩耗しATフルードが劣化するので、無駄な操作は機械をいじめているだけに過ぎない。AT本体のことを考えると、できる限りDレンジのまま走り続けるのが、一番理想的だということを覚えておこう。
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このように、ATはイージーなのが利点だが、雑に扱っていいものではない。基本的にかなりタフにはできているが、壊れるととても高価な部品でもあるので、仕組みと理屈をよく知ったうえで、正しく使いこなせるようになってほしい。