この記事をまとめると
■植物由来のバイオエタノールはCO2増減がゼロと見なされる環境負荷の小さい燃料
■ブラジルを始めヨーロッパでも普及しているが日本では供給体制が未整備
■e-fuel・水素燃料の台頭で普及の停滞が予想されるが技術的価値と可能性は依然高い
植物由来のカーボンニュートラル燃料
バイオマス(現生生物)を原料として作られた燃料のことを指す、バイオ燃料という言葉がある。石油燃料は、化石燃料という呼び名があるように過去(地質時代)の動植物の死骸が変化したもので、非常な広義でいえばバイオ燃料にあたるかもしれないが、バイオ燃料は植物の光合成による二酸化炭素の増減勘定がゼロと見なせるカーボンニュートラル燃料に相当すると見なせるため、残念ながら化石燃料にはこの増減勘定があてはまらず、使えば使うほど大気中の二酸化炭素量が増えることになる。
さて、このバイオ燃料のひとつにバイオエタノール燃料がある。いわゆるアルコール系燃料なのだが、植物を原料に作られるバイオエタノールは、カーボンニュートラル燃料と見なせるため、使用しても地球環境に与える影響は極小と見なされている。このバイオエタノールをガソリンに混入した燃料が、現在ヨーロッパなどで流通しているE5(エタノール5%)、E10(エタノール10%)ガソリンで、当然ながら純ガソリンより地球環境に優しいとされている。
欧州のガソリンスタンドで供給されるE10燃料画像はこちら
このエタノール燃料の普及度合いが顕著なのがブラジルだ。1970年代に勃発した石油危機をきっかけに、化石燃料の代替燃料としてバイオエタノールに着目。国策として原料となる植物の育成を推奨し、現状での燃料はE27.5(エタノール27.5%)が標準化。なんと驚くなかれE85(エタノール85%)やE100(エタノール100%)も販売されている。
バイオエタノール超先進国のブラジルは別格としても、ヨーロッパで標準化しているE5規格やE10規格のガソリンを日本のガソリンスタンドで目にする例は皆無に近い。ちなみに、日本で生産される自動車は、E5、E10燃料に対応しているというが、供給体制が整っていないためか、日本国内で実際に使えるケースはほとんどない。
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