この記事をまとめると
■急病などの異常を検知し自動停止するEDSSが普及を拡大させている
■観光バスからトラックへと導入が進み現在は一部の乗用車にも装備される
■周囲に異常を知らせつつ安全に停止し誤作動対策も配慮されるシステムとなっている
増加するドライバー異常による事故を未然に防ぐ
ドライバーが急病になるなどの異常が原因の交通事故は、年間200~300件発生しているという。最近でも11月4日、兵庫県加古川市で13台が絡んだ多重事故では、車列に突っ込んだクルマを運転していたドライバーが急性心筋梗塞を起こし、同乗者によると事故の直前に意識を失っていたという。
以前からこうした惨事が続いていたことから、国土交通省ではドライバーの異常を検知し、車両を自動的に停止させる「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」の普及を促進するために、2016年に世界に先駆けてガイドラインを策定した。
そして2年後、まず日野の大型観光バス「セレガ」で実用化。続いていすゞや三菱ふそうの観光バスにも投入されると、翌年には3社の路線バスにもEDSSが搭載された。
EDSSを搭載した日野セレガ画像はこちら
さらに2021年には、いすゞが国内トラック初となるEDSSを大型トラック「ギガ」に採用。こちらもUDトラックスを含めた国内4社に展開されていった。現在は一部の乗用車にも装備されている。
バスに最初に搭載されたのは、運んでいる命の数を考えれば当然だろう。次にトラックになったのは、乗用車より重く、追突事故を起こせば甚大な被害を出す可能性があるからだ。バスを含めて車両が高価であることも関係しているだろう。
大衆受けを狙って乗用車から始めるのではなく、道路の安全性を第一に考えたこのような導入方法は感心できるものだ。システムの作動は、運転席の前に装備されたカメラがドライバーの異常を検知したとき、あるいはドライバーや乗客がボタンを押した場合に開始される。
EDSSの作動ボタン画像はこちら
まずドライバーに警告を出し、それでも反応しない場合、自動的に減速して停止する。周囲の車両に異常を知らせるため、ハザードランプを点滅させたり、ホーンを鳴らしたりするほか、自動で路肩に寄せたり、停車後に緊急通報する機能をもつ装置もある。
このうちボタンは、トラックでは運転席、乗用車ではルームミラー根元などにそれぞれひとつ用意されているが、バスはドライバー用と乗客用のふたつある。乗客用ボタンは、運転席の真うしろの座席近くにあることが多い。
いすゞエルガの動画では、乗客が運転席背後のポールに取り付けられたボタンを押すと、日本語と英語でポールなどにつかまることなどをアナウンスしつつ減速し、車外へはホーンやハザードランプなどにより異常を知らせるという内容を紹介している。
EDSSの動作イメージ画像はこちら
間違えてボタンを押した場合を考えて、作動が開始するのは約3秒後となっており、もし解除したい場合は、運転席ボタンの外側のリングを回すとキャンセルされるという。
多くの乗客はバスを運転したことなどないだろうし、ドライバーが座ったままの状態で他人がステアリングやペダルを操作するのは至難の業だ。そういうことを考えても、バスからまずEDSSを導入したのは納得できるし、バスに乗る機会がある人なら、こういうシステムがあることは覚えておいたほうがいいだろう。