この記事をまとめると
■電動ショベルは排ガスゼロと静音性を実現する
■課題は稼働時間や充電設備と導入コスト
■水素やICT活用も含め建機の進化は加速するだろう
脱炭素化の流れは建設機械にも及ぶ
「カーボンニュートラル」の波は、いまや公道を走る乗用車だけでなく、建設現場を支える重機のインフラにまで波及している。なかでも注目を集めているのが、日立建機が市場に投入した最新の「バッテリー駆動式(電動)ショベルカー」だ。これまで、ディーゼルエンジン特有の凄まじい排気音と黒煙を放っていた油圧ショベルが、最先端の電気自動車(EV)さながらのクリーンなメカニズムへと変貌を遂げたのである。
最大の特徴は、文字どおり「稼働時の排出ガスゼロ」を達成したことだといえよう。従来のディーゼル機と異なり、二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)を現場で一切排出しない。日立建機の試算によれば、建設機械のライフサイクル全体におけるCO2排出量の9割以上が「製品稼働時」に集中している。ここを100%電気駆動に置き換えることで、環境負荷の低減をもたらしたわけだ。
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さらに、もうひとつの大きなメリットが「静音性」である。内燃機関をもたない電動ショベルはたいへん静かで、住宅街のなかで行う工事や夜間作業、あるいは屋内やトンネル内といった閉鎖空間での作業において、騒音ストレスを大幅に軽減する。オペレーターの耳に対する負担軽減も、大きな利点のひとつといえよう。
しかし、デメリットもないわけではない。最大の課題は「稼働時間と充電インフラ」だ。モデルによって異なるが、1回の充電による平均稼働時間は約2時間から5.5時間程度。長時間の連続作業には、急速充電器の設置や商用電源からの有線給電ケーブルの併用が必須になる。また、高価なリチウムイオンバッテリーを搭載するため、車両の初期導入コストが割高になる点も解決の必要があるといえる。
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電動化は、なにも日立建機だけで進められているわけではない。類似の環境対応建設機械としては、コマツやキャタピラー(CAT)なども独自の電動ミニショベルや、作業時の減速エネルギーを電気に換えて再利用するハイブリッド油圧ショベルを、精力的にラインアップしているのだ。
このような電動化以外にも、建設機械の環境対策技術はさまざまなシステムの導入が試みられている。その流れは、大別するとふたつあるとされる。ひとつは、水素を燃料とする「水素燃料電池(FC)」や, 水素を直接燃焼させる「水素エンジン」の搭載だ。バッテリー式では重量や稼働時間の面で対応が難しい大型の重機に対して、次世代のクリーンエネルギーとして期待されている。もうひとつは、「ICT(情報通信技術)を用いた施工の自動化・最適化」である。バケットの動きを半自動制御して無駄な掘削を減らし、現場全体の稼働効率を高めることで、結果として消費エネルギーを削減することができるのである。
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建設機械は公道を走行することも少なくないが、主たるフィールドは閉鎖された工事現場だから、新たなパワーユニットや自動化などの実証実験を行いやすい環境にある。ゆえに、今後とも建機はスピード感をもって大きく進化し続けていくに違いない。どのような新しいシステムが導入されていくのか、建機ファンならずとも今後の展開が楽しみである。