昭和世代なら誰もが通った道
「いまみたいにスマホひとつで何でも聴ける時代じゃないから、音楽を持ち歩く、クルマで聴く、友だちに貸す、自分だけのベスト盤を作る、その全部にカセットテープが関わっていましたよね。趣味の真ん中に音楽がある、そんな時代でした」
そう語るのはカセットテープのムックや雑誌記事を多く手がけてきた開発社の藤本さん。
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「TDKはかなり人気がありました。ずっと高いシェアを持っていたし、『カセットといえばTDK』という印象です」
TDK
MA-R(1981年)
1979年に登場したTDK初のメタルテープ。ダイキャストフレームの重量感も魅力。藤本さんが愛着があるのは1981年に発売された2代目。メタル粒子の高密度塗布でよりきめ細かいサウンドに。
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SA(1984年)
1975年登場のハイポジカセットの草分け的存在の「SA(SUPER AVILIN)」。1984年発売の6代目は全面ポリエステル・ハーフラベルを採用され微細な振動を抑える。
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AR(1984年)
「ノン・ポア(=NP)」磁性材を使用し、厚みのある中低音とすっきり伸びた高音、そして全体的には迫力のあるサウンドが持ち味の高性能ノーマルポジション。1990年代末まで継続。
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人気の理由は音質とデザイン、そして値段も重要なポイント。
「どれだけ音がよくても高すぎると毎回は買えない。だから、性能と値段と、見た目のかっこよさ、その全部が大事だった。カセットテープって、音の記録メディアであると同時に、すごく”モノ”として見られていたんです。
毎年モデルチェンジをしていて。本体も半透明になったり、質感が変わったり。だから同じシリーズ名でも、年式ごとに表情が違う。クルマのモデルチェンジに近い感覚ですね」
SONY
HF-ES(1984年)
高品質なソニー製オーディオに使われる「ES」の名を持つノーマルポジション。ブルーのソニーロゴが使われた本体内部には「DP-IIメカ」を搭載。巻き乱れの少ない走行安定性を実現。
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Super Metal Maste(1993年)
アナログカセットの限界に調整したソニーの技術の結晶。本体はセラミックハーフ製で重量もある。カセットケースも豪華で、艶消し加工が施されたアルミ製でレタリングシートも付属した。
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Duad/DUAD(1978年)
酸化鉄にクロムをディアルコーディング(二層塗り)したフェリクロムカセット。当時の最高性能だったが、値段も高かった。1978年登場の2代目から製品名が大文字の「DUAD」に変更。
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藤本さんはカセットテープのどこに惹かれたのだろう。
「何を聴くか、どう録るか、どのテープを選ぶか、どんなラベルにするか。そういう作業のすべてです。便利さではいまにかなわないけど、あれほど”自分の音楽”を自分の手で作っている実感があるメディアは、なかなかないと思います」
時代の気分や個人の熱量まで封じ込めるメディアだった、と。
「まさにそうですね。だからいままた見直されているのもわかるんです。音が少し不完全でもいい。むしろその不完全さに、人の手の跡や時代の匂いが残っている。カセットテープの魅力って、そこに尽きるのではないでしょうか」
Maxell
UD II(1984年)
1983年に登場したUDⅠとともに、マクセルを代表するカセットテープとしてロングセラーを続けたハイポジション。46分で500円という価格設定や「ワム!」の宣伝も話題に。
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XL II-S(1985年)
マクセルのハイポジション最高峰モデルがXL II-S。本体の素材にエンジニアリングプラスチックを採用することで低振動化と耐熱性を向上。改良を重ねながら1990年代まで販売された。
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Metal Vertex(1989年)
「超・底変調ノイズ」「ウルトラワイド・ダイナミックレンジ」をテーマに開発され、その技術から当時のCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)の「戦略物資等該当品」に指定されたほど。
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※本記事は雑誌「CARトップ2026年9月号」の記事を再構成して掲載しています