トップラリースト奴田原文雄がラリー経験者向けの本格スクールを開催

奴田原選手の同乗もある実戦向けの内容

 ヌタハラ ラリースクールは、その名のとおり、2006年に世界ラリー選手権(PCWRC)「ラリー・モンテカルロ」で日本人として初めて優勝し、全日本ラリー選手権では、シリーズチャンピオンを9度(この11月5日に開催となった新城ラリーで王手が掛かっていたものの残念ながら10度目のチャンピオンには届かず)獲得したトップラリースト・奴田原文雄選手が、ラリー経験者向けに開催するステップアップラリースクールである。

nutahara00この2016年7月に始まったスクールは、ラリー競技参加経験者であり、さらに上を目指すラリーストを対象にしたもので、1泊2日で行なわれる、かなり実践的な講義内容となっている。

nutahara01その第1回は、北海道の陸別町を舞台に7月末にグラベルステージで開催された。そして第2回は「林道ターマックでのタイムアップ」をテーマに、長野県でターマックステージとして開催。第3回は11月にグラベルステージを長野県の浅間サーキット周辺で開催、さらに第4回は1月21-22日にスノーステージ。さらには3月18-19日にターマックステージのスクール、といった具合で予定されている。

nutahara02スクールは1泊2日の構成となっており、初日昼に集合し、まず個人面談があり、午後にはブリーフィング、そしてドライバー、コ・ドライバーに分かれての実技指導。さらに翌日には座学、林道での実技指導とカリキュラムは夕方まで続く。車両は、基本的には各自がラリー競技で使用している車両をそのままもち込むことになる。

 実際にその会場へ足を踏み入れてみると、ラリーをやってみたいという未経験者や奴田原選手のファンがやってくるというものではなかった。ラリー経験のある”ガチの参加者”だらけなのだ。

taniguchinakamura実際にこのスクールに参加した4組のうちの1組、谷口いずみ/中村理紗ペアを紹介しよう。

 谷口ドライバーはこれまでワンメイクレース、そしてスーパー耐久シリーズにも参戦経験をもつドライバーである。が、ドライバー、コ・ドライバーともにラリーは今シーズン初挑戦、チーム結成も参戦初戦のわずか1か月前という、出来立てのペアだ。にもかかわらず、ネッツ群馬G’SPiCEのアクアで2016のTGRラリーチャレンジ(チャレンジカップ東シリーズ)に2戦出場。渋川3位、福島3位と好成績を収めている。
taniguchinakamura2ラリー初挑戦にあたって、国内外で活躍するラリードライバーの川名賢選手からさまざまなレクチャーは受けており、すでにラリーに必要な基礎知識は学んでいる。しかし、これまでの参戦を経て、それぞれに課題も出てきているのだ。2人のコミュニケーションの取り方は本当に良いのか? そして、習ったやり方とは違う自分たちに合ったやり方があるのではないか? といった興味も沸いていたという。

 年配のベテランがひしめいているのかと思っていたというが、スクールに参加して最初の印象は、若手もいて驚いたというもの。年齢は関係なくもっと速く走るために熱意のあるラリーストが集まっているという印象だったという。なかには30万円でもくる価値がある、という参加者もいた(講習費用は1泊2日でドライバーとコ・ドラ2名1チームで20万円)そうだ。

nutahara03奴田原選手は、車両に実際に同乗する。「路面のミューが低い広場での走行や、林道でのウエット走行を初めて体験し、ラリータイヤの特性をさらに知ることができたことがプラスになりました。ラリーは練習が簡単に出来ないため、とにかく場数を踏むことが自信にも繋がると思うので、このスクールはとても貴重な二日間となりました」と谷口ドライバー。

 また、ラリーの現場では、レッキ(試走)の際にペースノートを作っていくのだが、今回そのレッキのペースが遅いと奴田原選手から指摘されたという。ペースが遅くなることで必要のない情報を拾ってしまい、それが本番の邪魔になることがあるという。その指摘には2人ともに納得。

 谷口ドライバーは当初から「どうしても1本目のタイムが遅く2本目とのタイム差がありすぎるため、1本目から攻めた走りをするにはどうしたら良いか」という課題をもっていたようだが、このペースノートづくりの重要性に気が付いたという。「レッキでは本番でのスピードを意識した走りができていなかったこと、私の表現力が乏しく必要な情報を伝えきれていなかったこと、そのためにペースノートの完成度が低く、有視界に頼る走りになりタイムも出ず、ということでした」という。

nutahara04また、奴田原選手のコ・ドライバーの佐藤忠宜選手からは、コ・ドラだけの座学も開かれる。ペースノート(ラリーのスペシャルステージの際に使用するコースの状況を書き留めたノート。競技中はこのノートの情報をドライバーに伝える)のロスト(ノートのポイントと自車位置が合わなくなってしまうこと)を抑え、早期に復帰できる工夫などを教えてもらえたという。これまで14回のスペシャルステージで3~4回ロストしたことがあるという谷口・中村ペア、これは参考になったようだ。

 初日の夕方からの懇親会では、奴田原選手がどのようにして世界への挑戦のきっかけなど、若い参加者にとっては興味深い内容だったようだ。

 次回の開催は、第3回浅間ステージ(グラベル/11月19-20日) となるのだが、すでに申し込みは受付終了している。次々回は1月21日-22日のスノーステージ。ひと月半前には申し込みがスタートするので、年末はチェックを怠りなく。ちなみに毎回募集定員は4組8名限定となる。

 (写真:NUTAHARA RALLY SCHOOL、木村博道、原田貴俊)


新着情報