【試乗】ルノー メガーヌR.S.最後の限定車が見せたFFの常識を打ち破る走り! (1/3ページ)

FRのような素直なハンドリングが最高の心地よさ

 ワインディングが気持ちいい! 旋回中のアクセルのオンオフがハンドリングに与える影響がFRのように素直で、コントロール性に優れ、気持ち良く豪快にスポーティドライブを楽しめる。


思い返せば2011年。ルノーがドイツのニュルブルクリンクを開発拠点に定めながら本気で仕上げたメガーヌR.S.に初めて試乗したときに驚いたのもこれだ。FFモデルでありながら、旋回中に加減速をしても、グリップ感などのハンドルからの手応えや旋回力などに及ぼす影響がとても少ない。

 言うなれば、FFでのスポーティドライブは、通称トルクステアとも呼ばれるようなそれら特有の“癖”とも言える症状とうまく付き合いながら走るのが常とされていた。


今回、熟成を重ねて自然と顔がにやけるほどの気持ち良さを体験できた最新のメガーヌR.S.273に試乗しても、やはりその癖が一切なかった。


手になじむ太めのハンドルから伝わるのは、ドシッとフロントタイヤが絶えず路面を捉え続ける絶大なる安心感だけ。やもすると、これはFRでも得られないレベルのどっしり感や安心感だ。フロントタイヤの上に重量物のエンジンが乗り、フロントタイヤを上から押さえつけることでガッチリとグリップさせられるのがFFモデルの強み。

  

 しかし弱みは、先ほど述べたとおり、そのフロントタイヤで旋回力を生み出しながら加減速もしないといけないので、複合要求により運動特性に癖が生まれる。その癖がメガーヌR.S.にはほとんどないので、結果として残るのは、エンジン重量で強く押さえられた絶大なるグリップ力が絶えず得られるという世界。


なぜ癖をなくせるのか? メカ好きの方に改めて伝えておくと、その答えは、フロントサスペンションがダブルアクスル式であることによるものだ。

 サスペンション形状そのものはノーマルメガーヌと同様のストラット型。しかしタイヤを装着するハブへの連結部の形状が特殊。タイヤの方向に対してカサ上げされている形状で、効果はハンドルを切ったときのサスペンション上の回転中心と、タイヤの中心が理想的な位置に配置できることだ。

 通常のFFはフロントタイヤを駆動させるための駆動系配置を踏まえると、このサスペンション上の回転中心とタイヤの中心に大きなズレが生じる。なので、加減速だけとか、旋回だけならどちらかの中心軸で運動が作用するから良いが、旋回しながらの加減速など複合操作になると、操作に応じて作用点の場所が変化していく。

 これがトルクステアと呼ばれる癖の原因だ。この癖に、コストを掛けて配置を工夫し、ダブルアクスル式の特殊形状を実現させて対処したわけだ。FFモデルでスポーティドライブを楽しんだことがある方なら、あのハンドルが取られるような動きがない世界を思い浮かべて貰えば、効果は即座にイメージできるはず。

 メガーヌR.S.は、これがある限り唯我独尊的な魅力を今後も持ち続けるだろう。そう表現したいほど価値があるので詳しく述べたが、何度もいうが今回の試乗も改めて気持ちよかった!


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