メーカー選手権のヒーロー達【ポルシェ908】 (1/2ページ)

3リッターフラット6を搭載した純レーシングマシン

 1970年のル・マン24時間において、そのシーズンにデビューした917がポルシェに、悲願だったル・マン初制覇をもたらしたことは前回紹介したとおりだが、今回はその、4.5リッターの「スポーツカー」が誕生することになったプロローグともいうべきモデル、68年に登場したタイプ908を紹介しておこう。ポルシェ908

タイプ907の後継モデルで、空冷の水平対向エンジンをミッドシップに搭載するグループ6(SP=スポーツ・プロトタイプ)の純レーシングマシン。こう書いていくとタイプ906、いわゆるカレラ6の正常進化モデルと受け取ることもできるが、その精神、志、いやレース哲学は一新されていた。

それまでの906~910~907が(原則的には)2リッターのフラット6を搭載し、SPの2リッタークラスを争いながら、タルガフローリオのようなテクニカルコースで大排気量車に一矢報いようとしていたのに対して、908は当初から3リッターのフラット8を搭載していた。

 これはレギュレーションの変更が大きく影響しているのだが、FIA、正確にはその下部組織であったFISAが、世界スポーツカー選手権、正確には前年までの国際スポーツカー選手権を国際メーカー選手権へと名称変更するとともに、それまで門戸を開いていたビッグマシンにも参加制限を強化、グループ4(S=スポーツカー)は5リッター以下、SPも3リッター以下に排気量を制限したのだった。

もちろんそれまで培ってきたレーシングテクノロジーを駆使すれば3リッターのSPで5リッターのスポーツカーと互角の勝負を展開することは可能。スポーツカーにはトランクスペースが義務つけられるなど、パッケージングに幾分制限もあったし、何よりも50台という最低生産台数が課せられていたからフォードのような大メーカーにしか製作は不可能。

 だから5リッターのSと3リッターのSPによって戦われる68年シーズンのメーカー選手権は、ポルシェにとって願ってもない好条件だったのだ。日本の片田舎に住んでいた少年の知るところではなかったが……。


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