【インタビュー】ホンダ海外専売小型SUV「WR-V」の日本導入の可能性

ヴェゼルより安価で小さいSUVは日本でも展開を考える必要がある

 2017年6月5日から7日に栃木県内の本田技術研究所で開催された、ホンダの最先端技術を紹介する取材会「ホンダミーティング2017」。そこには、現時点で日本での販売計画が公表されていない、海外専売モデルが4車種展示されていた。ホンダミーティング

 その中でもWEB CARTOP編集部は、ヴェゼルよりもさらに小さな、ブラジル・インド向けクロスオーバーSUV「WR-V」に注目。軽自動車「N」シリーズの開発を指揮し、現在は小型車・軽自動車の開発を統括する、本田技術研究所の浅木泰昭(あさきやすあき)執行役員に、その開発秘話と日本導入の可能性を直撃インタビューした。

 ーーWR-Vが開発された経緯は?

浅木泰昭さん(以下浅木):先代の伊東孝紳社長(現・取締役相談役)の頃、各地域を自立させるという号令のもと、ブラジルのお客様のニーズを汲んで、ブラジルのことを考えたクルマを作ろうということになり、フィットをベースに開発したのがWR-Vです。

 ーーこれは、ヴェゼルよりもさらに短いSUVですよね?

浅木:はい。最初は、フィットがベースであることが色濃く残っているクルマを作ったのですが、それが受け入れられなかったものですから、もっと違いを際立たせて、フィットを感じさせないような形でSUVにして、商品ラインアップの幅を広げる目的も持たせました。その後、ブラジルだけではもったいないということで、インドでも生産しています。結果的に、インドのほうが先に発売されましたが。

 ーーヴェゼルとの違いは?

浅木:ボディの幅がヴェゼルよりも狭いですね、全長も短いです。以前、グローバル展開していこうとしたときに、ブラジルにもインドにも工場を作ったんですね。WR-Vを企画した時点で、両工場で持っているプラットフォーム……この場合はフィットですが、それをベースにしようということになりました。
その後、ヴェゼル/HR-Vも現地生産することになりましたので、それが分かっていたら、また違うクルマになっていたかもしれないですね。地域ごとに自立させようという方針のもと、その時に持っているプラットフォームを活用して、なるべく投資を抑えながら、お客様に違うクルマとして認識してもらい、別個に買ってもらおう、SUVの付加価値で売価をいただこうという方向で企画しました。

−−日本導入の可能性は?

浅木:このままかどうかは別にして、プラットフォームを共有するグループで……。SUVは今唯一、付加価値を付けて売価を取れるカテゴリーですから、当然そういうことは考えていくことになると思います。このクルマそのものかどうかは、ちょっとお答えできませんが(笑)、違うお客様に向けたクルマを効率良く開発していくことは、どこの地域でも考えていくことになると思います。

 ーーヴェゼルは200万円台半ばが中心の価格帯になっていますから、それよりも安価なSUVのニーズは、日本でも大いにあるのではないかと思います。

浅木:WR-Vはブラジルとインドで生産・販売していますが、そういった方向性は広がっていくと思いますね。スズキさんにはハスラーやイグニスもありますから、そういったカテゴリーにホンダは商品ラインアップの穴があるように見えますよね? ですから、そういったところを狙っていくことになると思います……いつとは言えませんが(笑)。
でも発想は、既存のプラットフォームを活用して、高付加価値型SUVの市場を開拓したいと思っているのは、多分ホンダだけではないと思いますけどね。
SUVを開発する際は、タイヤを大きくするためにベースのプラットフォームと全然違うものになりやすいという難しさがあります。ですから、お客様がイメージされているような安い価格で販売できるかというのが、技術面での勝負のポイントになります。

 ーーもしWR-Vを日本に導入する場合、生産は日本国内になりますか? それともインドから輸入する?

浅木:まあ、日本でしょうね。

 ーー寄居(埼玉製作所・寄居完成車工場)ですか?

浅木:そんなに具体的な話は全然ですが(笑)、日本も人口が減少して縮小市場になっていますから、その辺も考えながら、輸入して縮小市場の生産量をもっと落とすという選択は、あまりしたくないですね。
やはり国内の雇用と販売を両方とも維持していきたいですから、なるべく日本で売れるものは日本で作るということになると思いますね。その中で効率良く持っているプラットフォームを使って、イメージ通りの売価で売れるようにしないと、逆に「小さいのに高い」と言われてしまいますから。

 ーーほかのクルマに対して競争力がある価格設定にしなければ、いくら良いクルマでも売れないですよね。

浅木:逆に言うと、フィットをベースにしてもそれができなければ意味がないですからね、プラットフォームを新作したほうが安かったというのでは。そういったギリギリのところを狙っていくのが、この手のクルマで重要なポイントですね。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
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