支払い済みでもクルマがこない……新車販売現場の悪徳セールスマンの実態

購入者が注意を払えば防げるものも多い

 新車販売の業界に詳しいひとからはしばしば、「歴代先輩セールスマンが重ねてきた悪さのおかげで、どんどんセールスマンは仕事がやりにくくなっている」という話を聞く。

 新車購入の世界では車両代金について、”手形による決済”を断ることが大原則となっている。これもはるか昔の新車セールスマンが手形を悪用していたことが今も影響している。

 運輸支局へのセールスマンの出入りを禁じているディーラーもあるが、これも勝手にお客のクルマの名義変更などをさせないための対策とも聞く。バブルのころまでは、「とにかく台数を売れば何をしてもいい」くらいの空気のなか、セールスマンは新車を売りまくり、ベテランほど多額の”副収入”を得ていた。たださすがに昨今はディーラーもコンプライアンスやガバナンスを意識しており、セールスマンが“悪さ”をできないように管理をしている……、はずだったのだが、それでも“悪さ”を働くセールスマンが現存するので注意してもらいたい。今回はその一例を紹介しよう。

「そんなことあるの!」と驚いてしまうのが車両代金の持ち逃げ。「今でも年に数件は聞きますよ」とは、ある現役セールスマン。

 前述したように、過去のセールスマンの悪さが影響し、セールスマンの持っている領収書はカーボン複写で何枚もの綴りになった専用のものを使っている。お金を払う客の印鑑を押す場所も複数枚となっている。単にお客控えとディーラー控えだけでなく、ディーラーの各管理部門でも控えを持ち、きちんと客から預かり入金されているかを管理しているのである。

 このようななか、文房具店や100円ショップで売っているような一般書式の領収書を渡されたら、まずは持ち逃げの可能性を疑ってほしい。入金したつもりで新車がくるのを待っていたら、「入金されていない」との連絡があり、持ち逃げが発覚することもあるそうだ。そのため今では現金一括払いであっても、口座振り込みによる入金を基本としているディーラーがほとんどとなっている(マネーロンダリングなどを防止する意味でも実施している)。

 “偽造注文書”を作成して”空売り”が行われることもある。注文書については、1枚1枚に”注文書番号”という通し番号が印字されており、セールスマンは失敗しても破り捨てたりはできず、勤務する販売会社に返さなければならない。過去には領収書同様にカーボン複写で何枚にもなっていたが、電算化が進み、今では番号のついた正規の注文書用紙をプリンターで印刷することになっている。

 しかし、失敗した注文書などを隠し持つなどし、コンビニのカラーコピー機などを使って、巧みに“偽造注文書”を作り、車両代金を騙し取られることがあるそうだ。被害に遭った客としては正規に発注されているものと信じていたが、車両代金だけ持ち逃げされ、新車はもちろん正式に発注されていないので、待てど暮らせど納車されることはない。

 下取り車の転売についても注意してもらいたい。「うちの会社へ下取りに入れるより、知り合いの店に売ったほうがいい条件が出る」として、セールスマンが個人的に転売話を持ちかけてくることが今でもしばしばある。この転売話に客が同意すると、セールスマンは主に買い取り専業店に下取り車を持ちこみ、売却して現金化する。しかし買い取り店が支払った買い取り額がそのまま客に支払われることはまずなく、セールスマンが勝手に”中間マージン”を差し引いてから客に現金が渡される。

 積もり積もればではないが、この中間マージンをせっせと稼いだセールスマンが豪邸に住み、日本メーカー系ディーラーに勤めているのに、プライベートではドイツ製高級乗用車を乗りまわしていたなどということもあったようで、かなり荒稼ぎしているセールスマンも意外に多いようだ。大手買い取り専業店は現金で買い取り金額を渡すことなく、口座振り込みとなるところが多いので、現金払いしてくれる業者を選んで転売し、後腐れないようにするケースが多いようだ。

 このようなことを防ぐには、客自らが買い取り専業店に出向き、実際買い取り査定をしてもらい納得行けば売却すること。もちろん下取り車のオーナー自らが買い取り店などへ売却するのはまったく問題ないので、セールスマンに頼まないということ。「知り合いの店だから融通がきく」などとしてきたら、「同行させてくれ」とセールスマンに伝え反応を見ること。

 今の時代、このような“悪さ”を働き発覚した“代償”はかなり大きく、勤務先からはかなり厳しいペナルティが課される。車両代金の持ち逃げなどは、本人がそのまま逃亡するケースもあるし、逃亡しなくても、会社に居続けることはまずできないだろう。

 下取り車の無断転売については、本来下取りに入れればディーラーがそれを再販すること得られた利益を無断転売し、しかも勝手に中間マージンを取っているので、減給処分となることが多いようだ。

※写真はすべてイメージ


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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