「修復歴あり」の中古車をあえて選ぶメリットはあるのか?

修復の中身が正確に判断できない以上選ばないほうがいい

 先日仕事でロサンゼルスを訪れていた時、あるオートモール(ディーラーが街の1カ所に集中して出店しているところ)のテレビコマーシャルが頻繁にオンエアされていた。

 個人間売買で、あるクルマを買うためにそのクルマのオーナー宅を訪れた若者。現オーナーに「クルマのコンディションについていろいろ聞きたい」というと、「もちろん」と快諾する。

 すると若者は嘘発見機をオーナーにつけて質問を始めた。最初の質問が「事後歴はあるか?」。するとオーナーは「事故歴などはない」と答えると、嘘発見機の針が大きくふれ、オーナーは「2回あったかな」と言いかえる。以降も都合の悪いことを隠し続けるので、針は大きくふれ続け、最後は「オートスクエアの中古車なら安心」でオチとなった。

 果たして専売業者のほうが個人間売買より信用度が高いかはともかく、それだけ中古車を購入する際には慎重なチェックをしないと、なかなか良い買い物ができないことは万国共通なんだなと感じさせてくれた。

 以前ロサンゼルスで知人が自分のクルマを個人間売買で転売する場面に遭遇した。相手はクルマを入念にチェックし、商談は無事成立。相手の家にクルマを置きに行き、帰るときに「トランスミッション調子が悪かったんだよね」とのことであった。知人は別に相手が聞いてこないので答えなかっただけで、特別隠したわけでもないということになる。

 そこで今回のテーマ“事故修復歴ありのクルマを買うメリットとデメリット”となるのだが、はっきりいってメリットよりはデメリットのほうがかなり大きいといわざるをえないだろう。

「事故車だから安くなるのでは?」と価格面でのメリットを指摘するひともいるかもしれないが、価格面でそこまで魅力的に安くなっている場合には、それなりのダメージの大きい事故を受けて修復しているものと考えてもらいたい。

 社団法人・日本自動車査定協会のホームページによると、「修復歴とは車両の骨格の部分、つまりフレームやシャシーなどクルマの強度を保つ部分に影響を及ぼし、交換や修正をした経緯のあるもの」となっている。それでは実際の部位については、ラジエータコアサポート、クロスメンバー、サイドメンバー、インサイドパネル、ダッシュパネル、ピラー、ルーフ、センターフロアパネル、フロアサイドメンバー、リヤフロアとなる。

 たとえば大きな雹が降ってきて天井がボコボコになったので、ルーフ(天井)をまるごと交換すると、“修復歴あり”となるのだ。

 またフレーム修正まで必要なダメージを受けたとして、フレーム修正をしたとしても、ダメージを受ける前のなんでもなかった状態にまでは回復することは難しい。もちろん、ダメージのレベルや、どこまでコストをかけて修復を進めていくかによって異なっていくケースも否定できないが、まっすぐ走らなくなる(ステアリングをとられる)といった後遺症に見舞われるのが一般的となっている。

 事故修復歴のあるクルマはどんな修復をしているのか必ず説明を聞くだけでなく、可能ならば当該車両を試乗(構内でのチョイ乗り程度でも)して自分の身体でコンディションを確認することをおすすめする。

 自動車販売業界に詳しいひとによると、「あるディーラーに持ち込まれた事故車両について、メカニックによりフレーム修正が必要と判断されたことがあったそうです。するとオーナーが車両保険を使って修理するというので、修理見積をオーナーが加入している保険会社に送ると、『フレーム修正までする必要はありません。見た目だけ原状回復してください』と指示がきたそうです」。修理を任されたディーラーでは必要と判断したが、実際はフレーム修正を行っていないので、修復歴車扱いにならないことになる。もちろんその保険会社なりの判断でそこまで修理(フレーム修正)する必要はないと判断した事象なのだろうが……。

 また、「あるクルマを中古車として購入したら、しばらくしてエンジンが落下したというケースもありました。深刻なダメージを受ける事故を起こしていたのですが、その修理が十分ではなかったようなのです。しかもその状況を中古車として再販するまで結果として見落としていたのです」とのこと。

 意図的に隠すつもりがなくても、下取り査定やその後の再査定でも修復内容が不十分だったりすることを見落としてしまうことも稀にだがあるのは確かなようだ。

 そのようなこともあるので、事故修復歴車だから安くて良いのでは? などという前に、中古車選びは自分が納得できるまで確認しないと、思わぬ落とし穴も多く潜んでいるのである。試乗は現実的には難しいケースが多いかもしれないが、とりあえず申し出てみること。さらに内外装の入念なチェック、そしてエンジンを始動し振動やエンジン音などを聞いてコンディションを確認すること。

 中古車は古物扱いとなり、たとえ同年式同型車であっても、走行距離などをはじめコンディションは新車と異なり原則均一ではない。そしてどこまでコンディションの良し悪しをチェックするかは購入者の自己判断に任されているので、くれぐれも面倒くさがらずに入念にチェックしてもらいたい。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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