8代目が日本で復活! あの有名映画にも登場したトヨタ・ハイラックスの歴史を振り返る

和製ピックアップの礎はハイラックスが築いた

 トヨタと提携関係にある自動車メーカーというと、ダイハツ、スバルなどを思い浮かべる人が多いだろう。ダイハツがトヨタと提携したのは1967年。スバルは2005年のことだった。だがそれより古くから提携関係にある会社がある。

 それは日野自動車。トヨタと日野が提携関係を結んだのは、ダイハツより早い1966年のこと。日野といえば大型トラックやバスのイメージだが、かつてはルノー4CVをノックダウン生産したり、有名なRR車「コンテッサ」を生産したりしていた自動車メーカーだった。

 日野は1961年から小型のボンネットトラック「ブリスカ」を生産。一方、トヨタでも当時「ライト・スタウト」という小型トラックを生産していた。1966年の業務提携後、同じようなクルマが2種類あるのは効率が悪いと考えたトヨタは、ピックアップトラックの統合を決意する。

 そこで日野ブリスカに部品の共用、トヨタの設計基準の採用などの改良を施し、1967年「トヨタ・ブリスカ」として世に送り出す。同時に日野は後継モデルの開発に着手し、1968年に登場したのが、初代トヨタ・ハイラックスだった。今では世界中で愛されるモデルの開発に、日野が深く関わっていたのだ。

・1968年 ハイラックス

「ライトスタウト」、「ブリスカ」の後継モデルとして登場した3人乗りボンネットトラック。トヨタが企画し、開発と製造は日野自動車が担当した。70馬力の2R型1.5リッターエンジンを搭載、ミッションはコラム4速MT。荷台の長さは1850mmで最大積載量1トン。グレードはベーシックな「スタンダード」と、乗用車並みの装備を誇る「デラックス」を設定。このモデルから輸出されており、アメリカでは「トヨタ・トラック」と名乗った。

・1967年 トヨタ・ブリスカ

 業務提携で販売権がトヨタへ。ハイラックスの先代モデル「ブリスカ」は、もともと日野自動車のクルマ。1966年、トヨタと日野が業務提携を結ぶ。そこでトヨタとの部品共通化・設計変更され1967年に登場したのが「トヨタ・ブリスカ」だった。

アメリカで人気を呼びパーソナル化に拍車

 1960年代〜1970年代にかけて、ピックアップトラックは日本でも人気の車種だった。比較的安価で荷物も積めるため、ドアに「自家用」と書き込んで、自家用車として使う人が少なくなかった。

 クルマの構造も、現在多くのクルマが採用するモノコックボディ(構造自体で強度を確保する)ではなく、当時はラダーフレーム構造が多かった。フレームが強度を保つゆえ、上物のボディは自由度が高かった。ダイハツ・コンパーノなどはセダンやバンに加え、オープンやピックアップもラインアップしていたほど。トヨタでもクラウンやコロナにピックアップを用意していた。

 日本のピックアップは徐々に下火になっていったが、それよりずっと以前から現在に至るまでピックアップ人気の高い国がある。それは言うまでもなくアメリカだ。

 ハイラックスも初代モデルからアメリカに輸出され、そのコンパクトなボディで、日産のダットサン・トラックと並んで人気を呼んだ。アメリカでは商用ユースは少なく、ほとんど個人ユース。ハイラックスも代を重ねるたびに、パーソナルユースを意識したクルマになっていく。その理由はアメリカにあったのだ。

1972年 ハイラックス(2代目)

 乗用車のようなフロントが与えられた2代目。搭載エンジンは83馬力の1.6リッターに加え、「ハイウェイ」と呼ぶ105馬力の2リッター搭載車も設定された。コラム&フロア4速MTに加え、ハイウェイにはハイラックス初のフロア3速AT仕様も用意された。フロアシフト車は2人乗り。ホイールベースを通常モデルより215mm延ばした「ロングボデー」もラインアップ。1975年には排ガス規制に対応し、80馬力の1.6リッターエンジンのみとなった。

  

1978年 ハイラックス(3代目)

 パーソナル感が強まった3代目。標準ボディが3種、ロングボディ4種を揃え、トップモデルの「スーパーデラックス」はキャビンを65mm伸ばし、セミリクライニングシートを装備する。1979年にはハイラックス初の4WD、さらにディーゼル仕様を追加。1981年にはレジャービークルとしても使える、後席を備えたダブルキャブを加えている。

誰もが知るあの映画にハイラックスも出演

 1985年に全米公開された映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。タイムマシンのデロリアンで過去に遡って大騒動、また現代に帰ってくる、という有名すぎる映画だ。映画の最終盤でマイケル・J・フォックス扮する主人公マーティが現代へ帰ってくるが、じつは少しだけ歴史が変わってしまっていた。

トヨタ・ハイラックス

 マーティがガレージに入ると……その表情が変わる。明らかに羨望のまなざしで自分のクルマを見つめる。その先にあったのは……ピカピカの黒いピックアップトラック。それはまさしくトヨタ・ハイラックスだった。ちなみに家のクルマもBMW7シリーズになっていた(以前はシボレー・ノバ)。

 これはなにを意味しているか? 当時若者のあこがれのクルマの1台がハイラックスだったということだ。アメリカでは高校生が通学にクルマを運転することは珍しいことではない。ハイラックスを駆って学校に行ったら、友達はどんな顔をするか見たかったのだろう、マーティは。

 ピックアップトラックの本場、アメリカで日本のハイラックスは勝負し、そして世界中の誰もが知るような大ヒット映画に起用されるほどの認知度を得た、ということだ。

1983年 ハイラックス(4代目)

 2WDモデルは先代をキャリーオーバーし「ポピュラーシリーズ」と呼ばれ継続販売。さらに内外装を一新した実質4代目となる「コンフォタブルシリーズ」を設定した。エンジンは1.6リッター/1.8リッターガソリン、2.2リッター/2.4リッターディーゼル、さらに4WDには2リッターガソリンを搭載。ボディもシングルキャブとダブルキャブを揃える。1984年には派生モデルのSUV「ハイラックスサーフ」が派生した。

ハイラックスをベースにしたSUVモデルも大人気となる

 1980年代、ピックアップトラックを介して、現在も大人気のあるジャンルが誕生する。

 ピックアップは当たり前だが荷台はムキ出しだ。荷物を積んだ状態で雨が降れば、荷物は水浸しになってしまう。だったら荷台をなにかで覆ってしまえばいい。そこで荷台部分に被せるFRP製の屋根(シェル)を製作して売り出したところ、これがなかなかのヒットとなった。であれば、最初から屋根付きのトラックにすればいいじゃないか……ということで生まれたクルマがSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)。現在も大人気のクルマである。

 ハイラックスもSUVの定石通りに進化していく。1984年、4代目ハイラックスにFRP製のキャノピーを装着し、日本で「ハイラックスサーフ」、アメリカで「4ランナー」というSUVを発売。これが大ヒット。さらに1989年、5代目ハイラックスをベースに2代目となるハイラックスサーフ/4ランナーが登場。今度は最初からメタルトップのクローズドボディで、2ドアに加えて利便性の高い4ドアも設定。たちまち日米で主力モデルに成長していく。日本では消滅したが、アメリカで4ランナーはバリバリの現役だ。

1984年 ハイラックスサーフ

 ハイラックスから生まれたSUV。荷台部分にFRP製の屋根を装着するという、SUVの定石に従って誕生したクルマ。アメリカでの車名は「4ランナー」で、日本では全車4WDとなる。1986年には4WDが電子制御式になり乗用ワゴンモデルを追加した。

  

1988年 ハイラックス(5代目)

 極めて乗用車ライクで快適性も高められた5代目ハイラックス。四駆ブームもあって、4WDモデルは力強いフレア型のオーバーフェンダーを装着し2WDと差別化された。

 2WD用には1.8リッターガソリンと2.4リッターディーゼル、4WD用には2リッターガソリンと2.8リッターディーゼルが用意され、1994年には4WDに2.4リッターターボディーゼル&ワイドボディが追加された。

アメリカ&日本から撤退……そして約15年後の今再び再上陸する

 アメリカという国は、ピックアップトラックに関して完全なガラパゴスだ。人気がありすぎるし、どんどん大型化していく。現在、アメリカで販売台数トップ3は、みな全長6m級のフルサイズピックアップという異常さ。ハイラックスは小さすぎるようになり、1995年にアメリカから撤退。現在はタコマとタンドラに主役を譲っている。

 日本では、昔と違いピックアップ自体にあまり馴染みがなくなっていた。配達用の2トンクラスのトラックか、もしくは家庭用なら豊富にある軽トラック、という印象。1997年に6代目のハイラックスが登場するが、2004年をもって日本市場からも撤退してしまう。宿命のライバル、日産のダットサン・トラックはそれより前、2002年に日本市場から撤退済みだった。

 だが日本を除けば、ピックアップトラックは世界的になかなかの人気車種。新興国向けにトヨタは「IMVプロジェクト」を立ち上げ、そこで7代目のハイラックスを登場させた。世界には確かな需要があったのだ。

 そして2017年、ハイラックスは日本で再び動き出す。ピックアップ文化を日本に根付かせるという、途方もなく困難な宿命を背負って。

1997年 ハイラックス(6代目)

 ビジネスユースの商用仕様と、パーソナル向けの乗用仕様に2極化。後者を「スポーツピックアップ」と呼んだのが6代目だ。シングルキャブ&ダブルキャブに加え、キャビンを拡大し2ドアのまま後席も備えた4人乗り仕様のエクストラキャブも設定。ダブルキャブとエクストラキャブには+100mmのワイドボディもラインアップ。日本仕様はこの代でいったん消滅した。

  

2004年 ハイラックス(7代目)

 ひとつのプラットフォームから、新興国の多様なニーズに合わせて生産する「トヨタIMV(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ビークル)プロジェクト」の第一弾。新興国向けゆえ北米や日本では発売されず、アジアや南米が主。ピックアップのハイラックスは従来通り、シングル/エクストラ/ダブルキャブの3タイプ。共通プラットフォームでSUVやミニバンも存在する。


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